ウクライナ独立記念日:ゼレンスキー大統領の抗戦誓約と国際社会の支援、そして和平交渉の行方

ウクライナは8月24日、独立記念日を迎え、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国民に向けた抗戦を訴える演説で、祖国が自由のために戦い続ける決意を強調しました。「平和を求める声が届かない中で」も、ウクライナは屈することなく戦うと述べた大統領の言葉は、国際社会に強いメッセージを送りました。

ゼレンスキー大統領、独立記念日に「公正な平和」を訴える

ゼレンスキー大統領は、独立記念日の演説において、ウクライナが求めるのは「公正な平和」であり、その未来は「私たちだけによって決められる平和」だと主張しました。さらに、「ウクライナは犠牲者ではなく、闘士だ」と力強く述べ、現状を「まだ勝利していないが、間違いなく、負けてはいない」と表現しました。この発言は、国民の士気を高めるとともに、国際社会に対しウクライナの揺るぎない決意を示唆するものです。

ロシア、ウクライナの原発ドローン攻撃を非難 – ウクライナはプロパガンダと反論

この演説が公開される直前、ロシアは同国西部クルスク州の原子力発電所が夜間にウクライナのドローン攻撃を受け、火災が発生したと発表しました。しかし、ウクライナ政府の偽情報対策センターは、ドローン撃墜が火災を引き起こしたとの情報があると説明し、ロシアがウクライナを非難するのはプロパガンダの「典型的な手法」であり、「操作した情報を広めている」と強く反論しました。原発の広報担当によると、この火災による負傷者はなく、放射線レベルは通常の範囲内であったものの、変圧器が損傷したとされています。国連の国際原子力機関(IAEA)は火災報告を認識しつつも独自確認はできないとし、すべての原子力施設は常に保護されるべきだと改めて強調。IAEAはこれまでも、ロシアとウクライナ双方に対し、原子力施設周辺での最大限の自制を繰り返し求めてきました。

双方による捕虜交換の実施

独立記念日と同じ24日には、ロシアとウクライナの間で捕虜交換が行われ、双方が146人ずつの兵士や民間人を交換したと発表しました。ロシア国防省は、ウクライナが数カ月にわたり部分的に占領していたクルスク州の8人が引き渡され帰国すると伝えました。一方、ゼレンスキー大統領によると、ロシアから帰還したのは兵士、国境警備隊員、民間人らで、そのほとんどが2022年以降に拘束されていたとのことです。この中には、戦争開始時に「キーウ州で拉致された」ジャーナリストのドミトロ・ヒリュク氏も含まれていました。

国際社会からの結束と支援のメッセージ

独立記念日には、ウクライナが1991年に旧ソヴィエト連邦から独立したことを祝う式典がキーウで開催され、多くの国際的な要人が出席し、ウクライナへの連帯を表明しました。

ウクライナ独立記念日を祝うキーウ市内で、花束を持つゼレンスキー大統領夫妻とカナダのカーニー首相。国際社会の連帯を示す場面。ウクライナ独立記念日を祝うキーウ市内で、花束を持つゼレンスキー大統領夫妻とカナダのカーニー首相。国際社会の連帯を示す場面。

カナダのマーク・カーニー首相は、聖ソフィア大聖堂でゼレンスキー大統領の傍らに立ち、「とても単純で重要なことを言いたい。カナダは常にウクライナと一緒に立ち向かう」と演説。ウクライナメディアの報道によると、カナダは20億カナダドル(約2130億円)規模の軍事支援の半分以上を占めるドローン、弾薬、装甲車を、早ければ9月にもウクライナに届ける予定です。

式典にはアメリカのキース・ケロッグ・ウクライナ担当特使も出席し、ゼレンスキー大統領からドナルド・トランプ米大統領の支援に対する感謝の言葉を受けました。その後、ケロッグ氏は「私たちはこれを成功させる」と述べたといいます。

ゼレンスキー大統領はソーシャルメディア「X」で、独立34周年を祝う各国首脳からの書簡を次々に公開しました。トランプ氏からの書簡には、独立34周年を祝う言葉と共に、「今こそ無意味な殺りくを終わらせる時だ」と記され、「合衆国は、流血を終わらせ、ウクライナの主権と尊厳を保証する、持続的で恒久的な平和につながる、交渉による合意を支持する」と表明されていました。ゼレンスキー大統領は、アメリカが「ウクライナと並んで立っている」ことに謝意を示し、「私たちは協力することで、この戦争を終わらせ、ウクライナの真の平和を実現できると信じている」と付け加えました。

イギリスのチャールズ国王からの書簡も公開され、その中で国王は「ウクライナの人々の不屈の勇気と気骨に対し、最大かつ最も深い称賛の気持ちを抱き続けている」と述べ、「私たちの両国が、ウクライナにおいて公正で永続的な平和を達成するために、さらに緊密に協力できることを願い続けている」と綴られていました。ゼレンスキー大統領は、「(国王の)優しい言葉は、戦争という困難な時期にあるこの国の国民を、本当に奮い立たせるものだ」と歓迎の意を表しました。イギリス政府は、ウクライナの独立記念日に合わせ、首相官邸でウクライナの国旗を掲揚すると発表。英国防省は、英軍の専門家がウクライナ兵を訓練する「インターフレックス作戦」を、最短でも2026年末まで継続すると明らかにしました。

さらに、ノルウェーは24日、ウクライナに約70億クローネ(約1020億円)相当の防空システムを供与すると発表。スウェーデンも同日、ウクライナとの共同発表で、防衛関連の生産に両国が協力して取り組むことで合意したと伝えました。

戦況と和平交渉の不透明性

戦況に目を向けると、ロシアは23日、ウクライナ東部ドネツク州の二つの村を占領したと発表しました。ロシア軍はウクライナ東部で、非常にゆっくりと、多大な犠牲を払いながらも前進を続けており、現在、ウクライナ全領土の約2割を掌握しているとされています。

一方、和平交渉の行方は依然として不透明です。米アラスカ州で今月15日にあったトランプ氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の首脳会談をめぐっては、両首脳は成功だったと主張しています。しかし、トランプ氏はその後、ロシアとウクライナの間で和平合意が成立していないことに不満を募らせている様子です。トランプ氏は、ロシアに追加の経済制裁を科すか、和平交渉から手を引くことを検討していると述べ、22日には「私たちが何をするか、近く決定する。とても重要な決定になる。大規模な制裁か、大規模な関税か、その両方か、あるいは何もしないで、あなたたちの戦いだと言うかだ」と発言しました。

ゼレンスキー大統領は繰り返し、無条件での停戦を求めており、ヨーロッパの支援国も戦闘を停止すべきだと主張しています。ゼレンスキー大統領は、戦争終結に向けたプーチン氏との会談が開かれないよう、ロシアが「全力を尽くしている」と非難しています。これに対し、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、プーチン氏はゼレンスキー大統領と会う用意があるとしつつも、「それは首脳会談の議題が準備できたときであり、議題はまったく準備されていない」と述べ、ゼレンスキー大統領が「すべてに対してノー」と言っていると批判しました。

結論

ウクライナ独立記念日は、ゼレンスキー大統領による揺るぎない抗戦の誓いと、カナダ、アメリカ、イギリスをはじめとする国際社会からの強力な支援が改めて示された一日となりました。一方で、ロシアによる原子力施設へのドローン攻撃の主張や、進展の見えない和平交渉の現状は、この紛争が依然として複雑かつ困難な局面にあることを浮き彫りにしています。ウクライナの「公正な平和」への道のりは長く、国際社会の継続的な連帯と外交努力が不可欠であると言えるでしょう。

参考資料

BBC News