京都大学吉田寮、1世紀超の歴史に新展開 – 老朽化訴訟で和解成立、退去へ

築100年を超える京都大学の学生寮「吉田寮」(京都市左京区)を巡る長期にわたる老朽化訴訟が、25日に大阪高裁で和解に至った。大学側が旧棟の明け渡しを求めていたこの問題は、現在も入居する8人の学生が来年3月末までに退去することで合意。これにより、国内最古級とされる学生寮の歴史的転換点に新たな一章が刻まれることとなった。

築100年超の「国内最古」を巡る紛争の経緯

大正2年(1913年)に完成した木造2階建ての吉田寮旧棟は、現役の学生寮としては国内で最も古い歴史を持つとされる。その独特の自治運営と自由な校風は、多くの学生に愛されてきた一方で、建物の老朽化は深刻な問題となっていた。平成29年12月、大学側は旧棟が地震により倒壊する恐れがあるとして安全確保に関する基本方針を公表。新規入寮の停止と既存寮生への退去を求めたが、寮生側はこれを一方的な通告であると強く反発し、両者の間で法廷闘争が勃発した。

京都大学吉田寮旧棟の玄関。築100年を超える木造建築の歴史を感じさせる外観京都大学吉田寮旧棟の玄関。築100年を超える木造建築の歴史を感じさせる外観

一審判決と控訴、そして和解へ

昨年2月に京都地裁で下された一審判決では、基本方針公表までに入寮していた学生とは「在寮契約」が成立しているとし、彼らの居住継続を認めた。しかし、それ以降の入寮者に対しては明け渡しを命じる内容であり、この判決に対し、大学側と寮生側の双方が控訴していた。

今回の大阪高裁(徳岡由美子裁判長)での和解条項では、一審で明け渡しを命じられた2人を含む計8人の寮生に対し、今年度末(来年3月末)までの居住が特別に認められた。さらに、将来的な工事完了後には、一定の条件を満たせば再入居が可能となる条項も盛り込まれている。大学側は、工事期間中の仮住まいを確保することに加え、5年以内に工事を完了するよう努めることも約束した。

学生と大学、それぞれの「難しい決断」と「大きな進展」

和解成立後、寮生側を代表して京大大学院の大隈楽さんは会見で、「これから入りたいという人に寮を残したいという思いから和解を受け入れた。非常に難しい決断だった」と、苦渋の胸の内を明かした。これに対し、京都大学側は「(旧棟に)学生が居住し続ける事態を避けられる見通しとなったことは、大学にとって大きな進展である」とのコメントを発表。長年の懸案事項に一区切りがついたことへの安堵を示した。

この和解は、歴史ある吉田寮の安全確保と、寮生たちの居住権という二つの重要な側面の間で、双方が歩み寄った結果と言える。今後の工事の進捗と、将来的な吉田寮のあり方に注目が集まる。

参考文献