2025年8月15日夜、フィリピンの首都マニラで日本人2人が銃殺されるという衝撃的な事件が発生しました。この事件は単なる強盗事件ではなく、背後に複雑な組織犯罪や利権争いが絡んでいる可能性が指摘されています。元徳島県警捜査1課警部であり、裏社会情勢に詳しい秋山博康氏が、この未曾有の事件のシナリオを独自の視点から推理し、その深層を明らかにします。国際的な組織犯罪と邦人被害の実態に迫る、緊迫した分析です。
マニラで発生した悲劇:日本人銃殺事件の概要と逮捕者
事件は8月15日午後10時40分ごろ、フィリピン・マニラで発生し、2人の日本人旅行者が銃殺されました。この残忍な事件の捜査において、被害者の旅行ガイドを務めていたフィリピン人の兄とその弟が逮捕されています。マニラ警察は、事件の首謀者は日本国内にいる可能性が高いと見ており、日本人による殺害依頼があったと推測しています。
逮捕された旅行ガイドの供述によれば、日本にいるとされる首謀者から、約2300万円という高額な報酬で殺害を依頼されたとのことです。前金として2万6000円を受け取り、犯行に及んだとされています。この供述は、事件の背後に計画的な犯罪組織の存在を示唆しており、単なる偶発的な事件ではないことを浮き彫りにしています。
フィリピン邦人銃殺事件で逮捕されたフィリピン人の兄弟容疑者
元捜査官が指摘する「反社がらみの暗殺」の可能性
元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は、このマニラでの日本人銃殺事件について「これは反社がらみのヒットマンを使った暗殺の可能性が高い」と強く指摘しています。秋山氏がフィリピン在住の裏社会に精通する協力者から受け取ったメールでは、事件発生直後に「これは強盗事件ではありません。反社を伴う日本人がバックにいます」という情報がもたらされたといいます。この情報は、事件のニュースが日本で報じられる前日に入手されており、その信憑性の高さを物語っています。
さらに秋山氏は、協力者からの情報として、昨年10月頃からフィリピンで日本人を狙った拳銃使用の強盗事件が約20件発生している状況を明かしました。フィリピンでは許可があれば一般市民でも拳銃を所持できるため、こうした事件が多発している背景があります。しかし、今回の日本人殺害事件は、その一連の強盗事件とは性質が異なり、「日本人の元反社がバックにいる」という、より深刻な組織犯罪の影が指摘されています。フィリピンの捜査当局も「日本人うんぬん」と発言していることから、すでに日本国内の首謀者についてある程度特定し、捜査が進められているものと秋山氏は推察しています。
事件の裏に潜む「利権」争い:特殊詐欺グループ乗っ取りか
秋山氏は、今回の事件が「利権に絡んでいる可能性が高い」との見解を示しています。フィリピンでは、特殊詐欺やオレオレ詐欺といった犯罪グループが拠点を置いていることが知られており、そうしたグループが別のグループによって「乗っ取られる」ケースが多々発生しているといいます。
今回の事件で射殺の対価として提示された報酬が日本円で約2300万円という高額であることは、事件の動機がこの金額をはるかに超える「利権」にある可能性を強く示唆しています。詐欺グループの乗っ取りによって得られる莫大な利益が、今回の暗殺計画の背景にあるという見方もできます。
繁華街での犯行と「ずさんな実行」の背景
人通りの多い繁華街で敢行された今回の犯行について、秋山氏は実行犯の「ずさんさ」を指摘しています。首謀者の計画が末端の実行犯に十分に伝わっていなかった可能性を予想。「いつ、どこで、どういう状況でやるか」という事前の共謀が不十分だったため、計画が末端で滞り、不手際な実行につながったと考えられます。
例えば、実行犯は被害者がタクシーを降りた際に犯行に及んだとされていますが、これは首謀者の綿密な計画というよりも、末端の判断によるところが大きい可能性があります。また、犯行後にオートバイで逃走したものの、すぐに近くで乗り捨て、しかも盗難車ではなく自分のオートバイを使用していたため、速やかに逮捕されました。このような実行犯の行動は「非常に雑」であり、首謀者の周到な計画とは対照的であると秋山氏は推察しています。
捜査かく乱とフィリピンが選ばれた理由
実行犯が強盗行為に及んだ理由については、秋山氏は「捜査のかく乱」を目的としたものだと見ています。フィリピンでは日本人を狙った拳銃強盗が20件近く発生していることから、今回の事件もその一連の強盗事件に見せかけ、捜査の目をくらまそうとした犯行であると分析しています。
さらに、犯行場所としてフィリピンが選ばれた理由についても言及。フィリピンは「賄賂の国」として知られ、賄賂によって簡単に犯罪を起こす人物が多数存在するといいます。秋山氏の協力者も「恐らく特殊詐欺のグループを乗っ取るための利権が動機になっている可能性が高い」と語っており、こうした背景がフィリピンを犯罪の舞台として選びやすくしていると考えられます。
今回の日本人銃殺事件は、単なる強盗事件ではなく、国際的な「反社会勢力」が関与する利権争いの結果である可能性が高いと秋山氏は分析しています。フィリピンの治安状況や特殊詐欺グループの実態、そして巧妙な捜査かく乱の手口など、この事件には多くの裏社会の闇が凝縮されていると言えるでしょう。捜査の進展とともに、事件の全容と日本国内にいるとされる首謀者の実像が明らかになることが期待されます。
参考文献:
ABEMA TIMES編集部