米国が8月18日から、鉄鋼・アルミニウム成分を含む完成品および加工品407品目に対し、含有量に応じた50%の関税適用を開始しました。これにより、韓国の中小企業は「関税爆弾」とも言える甚大な打撃に直面しており、最悪の場合、輸出中止に追い込まれる可能性も指摘されています。米トランプ政権は今年3月に鉄鋼・アルミニウムおよび派生商品に25%の関税を適用し、6月にはこの税率を2倍の50%まで引き上げていました。これにより、すでに1800社の韓国中小企業が影響を受けてきましたが、今回の407品目追加措置は、企業の被害をさらに拡大させることは避けられない状況です。
米国の新たな関税措置とその背景
今回の米国による追加関税措置は、同国がこれらの品目における独自生産能力に不足があるため、輸入依存度が高いという特異な背景を持っています。通商専門家たちは、今回の措置が単なる関税収入を目的としたものではなく、韓国からの追加的な対米投資を引き出すために、中小企業を「人質」に取る「トランプ式交渉術」の一環であると見ています。この戦略は、貿易交渉において相手国から譲歩を引き出すための圧力として機能すると考えられています。
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「輸出中断」の危機に直面する韓国中小企業の実態
新たな関税措置により、韓国の中小企業からは「輸出中断」の危機に瀕しているとの悲痛な訴えが相次いでいます。例えば、アルミニウム素材のスポーツ用品を米国に輸出するある企業(A社)は、今回の措置で実質的な関税負担が20%前後にまで上昇しました。この企業の関係者は、「値上げすれば現地業者との競争で不利になり、現状を維持しようとすれば損失が避けられない。海外への工場移転や輸出先の多角化も現実的には難しい」と苦境を語っています。
農業機械メーカーも同様に、市場の低迷と関税による二重の打撃に直面しています。特に北米に100馬力以下の中小型トラクターを輸出する大同のような企業は、「製品ごとの鉄鋼含有量が異なり、追加コストを正確に計算するだけでも大変だ」と困難を訴えています。また、ボイラー輸出で北米市場において大きなシェアを持つ京東ナビエンやクィトゥラミも、ボイラー完成品が追加関税品目に含まれたことで打撃が避けられません。さらに、最近米国で需要が急増していた変圧器も今回の対象に含まれており、業界ではボイラーと変圧器に対して相互関税(15%)に鉄鋼含有量に応じた関税が加わり、最終的に約25%程度の関税が課されると推定されています。
現実化する被害と今後の展望
中小企業の被害は既に現実のものとなっています。毎年約80億ウォン相当のボルトやナットを米国に輸出するある企業(B社)は、25%の関税を前提に契約し輸出した製品が、海上運送中に関税が50%に引き上げられたため、20億ウォン相当の製品が米国の保税倉庫に足止めされる事態となりました。これにより、バイヤーからの新規発注も中断されています。また、配管資材メーカーのC社は、米半導体大手のマイクロンやテキサスインスツルメンツなどへの供給許可を得ていたにもかかわらず、米関税当局により鉄鋼資材に分類され輸出が阻まれ、本来受注するはずだった分は現地のライバル企業に流れてしまったといいます。仁川市に位置する自動車部品メーカーのD社は、「日本製品よりも割高な状況で、さらに高関税が課されれば競争は不可能だ。既存の受注は30%減少し、新規受注も事実上閉ざされた」と説明し、日韓間の競争力にも影響が及んでいることを示唆しています。
元産業通商資源部通商交渉本部長である鄭仁教氏は、この措置の背景には米鉄鋼業界の要請があるとしつつも、「大半が消費者物価の上昇につながる品目であり、経済理論では説明できない」と指摘しています。同氏は、「トランプ大統領は常に相手国の輸出品を人質に取って譲歩を引き出す方式を選んできた」と述べ、今回の措置も25日に開催される韓米首脳会談で、韓国からの追加投資や譲歩を迫るための交渉カードとして使われる可能性が高いと分析しています。この動きは、韓国経済、特に輸出に依存する中小企業の将来に暗い影を落としており、今後の米韓間の貿易交渉の行方が注目されます。
参考文献
- 朝鮮日報日本語版, 「米国の『関税爆弾』が韓国中小企業を直撃、輸出中止の危機」, 2025年8月23日, https://news.yahoo.co.jp/articles/6ecf0afc1ba641e73673905d4feb44a3d26441f4