2025年度大学入試において、東京都立日比谷高校が東京大学合格者数81人という驚異的な記録を達成しました。前年の60人から大幅に増加し、公立高校としては全国トップ、私立中高一貫校を含めても全国5位という輝かしい実績を上げています。一般的に、先取り学習を行わない公立高校は大学受験で不利とされがちですが、日比谷高校はいかにしてこの大躍進を遂げたのでしょうか。本記事では、同校の教育課程の特色、人材育成方針、そしてその進路指導の根幹にある「第一志望主義」について、統括校長の萩原聡氏の言葉を交えながら深掘りします。
日比谷高校、公立校トップの進学実績:東大合格者数81人の快挙
2025年度入試での日比谷高校の成果は、教育界に大きな注目を集めています。特に、東京大学への合格者数が81人(うち現役生65人)に達し、前年度の60人(うち現役生52人)を大きく上回った点は特筆すべきです。この数値は、公立高校の中で群を抜いてトップであり、全国的に見ても開成、筑波大学附属駒場、聖光学院、麻布といった名だたる私立中高一貫校に次ぐ5番目の多さです。難関国立4大学(東大、一橋大、京大、東工大<2025年度からは東京科学大の理工系>)と国公立大学医学部医学科を合わせた現役合格者数も121人となり、近年で最高の成果となりました。この実績は、公立高校が私学に引けを取らない、あるいはそれ以上の大学合格実績を達成できることを明確に示しています。
東京都立日比谷高校の進学指導戦略を語る萩原聡統括校長
過去からの軌跡:学校群制度の苦境から「進学指導重点校」への変革
日比谷高校の歴史は古く、1878年に旧制一中として開校して以来、多くの東大合格者を輩出してきました。しかし、その輝かしい歴史の中には困難な時期も存在します。1967年に導入された学校群制度により、受験生が志望校を直接指定できなくなった結果、優秀な生徒の確保が難しくなり、ピーク時に200人ほどいた東大合格者数は一桁台にまで減少しました。この低迷期を経て、日比谷高校は2001年からの都立高校改革の中で「進学指導重点校」に指定されます。この指定を契機に、学校独自の改革が本格化し、着実に進学実績を回復させていきました。今日の成功は、過去の経験から学び、不断の努力と改革を重ねてきた結果と言えるでしょう。
「第一志望主義」が支える教育戦略:89%が難関国公立大を目指す背景
萩原聡統括校長は、今回の躍進について「学校として東大進学を推奨しているわけではなく、生徒一人ひとりの志望を尊重した結果」であると強調します。現3年生(317人)を対象とした志望調査では、東大を第一志望とする生徒が55%を占め、さらに京大、一橋大、東京科学大(理工系)を合わせると73%に上ります。これに国公立大学医学部医学科志望の16%を加えると、実に89%もの生徒が難関国公立大学を第一志望としていることが明らかになります。
この高い志望を実現するため、日比谷高校では国公立大学の受験を前提としたカリキュラムを編成しています。各学年で3回の個人面談と1回の三者面談を実施し、多岐にわたるガイダンスを通じて、生徒個々の課題に応じた情報提供を手厚く行っています。この徹底したサポート体制こそが、「最後まで第一志望を諦めさせない」という同校の進路指導方針、すなわち「第一志望主義」の根幹を成しています。生徒の潜在能力を引き出し、夢の実現を強力に後押しする日比谷高校の教育戦略は、他の公立高校にとっても示唆に富むものです。
コロナ禍明けがもたらした好影響:学習集中力と対面授業の重要性
2025年度入試における日比谷高校の躍進には、コロナ禍が明けた影響も大きく寄与していると萩原校長は分析します。パンデミックの間、多くの学校活動が制限され、生徒たちの学習環境にも大きな影響が出ました。しかし、在学中にコロナ禍が収束し、学校行事や部活動が再開されたことで、生徒たちは学習と課外活動のメリハリをつけながら両立を図れるようになりました。これにより、学習への集中力が増したと見られています。また、オンライン授業から対面授業へと完全に戻り、学校の授業をベースに学習を進められるようになったことも、成績向上に貢献した重要な要因であると考えられます。対面での学びがもたらす質の高い教育と、学生生活の充実が、生徒たちの学業成績に良い影響を与えたのです。
結論
東京都立日比谷高校の2025年度入試における目覚ましい成績は、単なる一過性の現象ではなく、長期にわたる学校改革と独自の教育理念「第一志望主義」が結実したものです。学校群制度による低迷期を乗り越え、「進学指導重点校」として再興した歴史は、公立高校の可能性を強く示しています。生徒の夢を尊重し、徹底したサポートと質の高いカリキュラムを提供する日比谷高校の取り組みは、これからの日本の教育、特に公立学校の進むべき道に大きな示唆を与えるでしょう。コロナ禍明けの環境変化も追い風となり、生徒一人ひとりの「第一志望」を追求する姿勢が、輝かしい結果へと繋がりました。
参考文献
- 東洋経済education × ICT (2025年8月29日). 「89%が「難関国立4大学」や「国公立大医学」志望」. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/1745f8720dbd5bde238d0ecc39b6b5ae99d8a6c2