今年30周年を迎えるフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』。その記念企画として期間限定配信される話題作の中から、今回は「しっくりくる生きかた」に焦点を当てます。風呂なしアパートで「くず米」を主食とし、借金を抱えながらも地下アイドルとして活動するきららさん(当時38歳)の姿は、多くの視聴者の心に響きました。本記事では、きららさんと出会い、その人生に深く寄り添い続けた福田真奈ディレクターへの独占インタビューに基づき、彼女の「自分らしい生き方」への探求とその背景を深く掘り下げます。
ドキュメンタリーの主人公となるまでの出会い
福田ディレクターがきららさんと出会ったのは、別の地下アイドルの取材中でした。仕事帰りの作業着姿で、ひときわ輝く視線でステージを見つめるきららさんの姿に、福田ディレクターは強く惹かれたといいます。「本当に楽しそうで、この方の素性が知りたいと思って」と声をかけたことが、二人の関係の始まりでした。当初はファンとしての取材を考えていましたが、経済的に厳しい生活をしながらもライブに情熱を注ぐきららさんの「ものすごく節制された暮らし」と「応援への思い」を知るうちに、彼女こそがドキュメンタリーの主人公であると確信したそうです。
ステージで輝く地下アイドルきららさん、ファンとの交流を通じて自己表現
壮絶な生活とカメラの前での素顔
本格的な取材が始まると、きららさんの壮絶な生活が明らかになりました。ネットオークションで購入した鳥のエサにも使われる「くず米」を主食とし、風呂のないアパートで生活する様子は視聴者に衝撃を与えました。特に、自宅で裸になって体を洗う「行水」のシーンは、きららさんの飾らない日常を象徴しています。トランスジェンダーであるきららさんが「銭湯に行けないと、お風呂はどうしているんですか?」という質問に対し、迷うことなくいつもの「行水」を実践しながら説明してくれた姿は、彼女のオープンな人柄を示していました。福田ディレクターは、この包み隠さない姿勢の背景には、地下アイドル特有の「注目されたい」という気質があるのではないかと推測しています。
風呂なしアパートでくず米を食する地下アイドルきららさん、質素な生活の一端
きららさんはどんな苦境に立たされても笑顔を絶やさないことで知られています。福田ディレクターは、その笑顔は「自分がどう見られているか」を意識して作られた表情だと分析します。カメラを向けると、電車の中で佇む時でさえ口角が少し上がる様子が印象的だったといい、どんなに辛い状況でも涙を見せることは一度もなかったそうです。
人柄を映し出す「しっくりくる」という言葉の重み
きららさんを取り巻く人々は皆、彼女の誠実な性格を口々に語ります。福田ディレクター自身も、建設現場での転落事故後、救急車で搬送された直後にきららさんから連絡があった際に、その誠実さを改めて感じたといいます。
取材中、きららさんが何度も口にした「しっくりくる」という言葉は、番組のタイトルにもなりました。福田ディレクターはこの言葉について、「心から言っていると感じました。これは、『しっくりこない』ことを知っている人にしか出てこない言葉。性別からして『しっくりきていない自分』があるからこそ、あの言葉には感情がすごく乗っていると思い、印象に残っています」と語り、きららさんの深い内面と、自己との葛藤、そして自分らしい生き方を求める強い意志を映し出していると感じています。
まとめ
『ザ・ノンフィクション』の特別企画として再注目される「しっくりくる生きかた」は、地下アイドルきららさんの壮絶ながらもひたむきな日常と、彼女が追い求める「自分らしい生き方」の模索を描き出します。福田真奈ディレクターの視点を通して、経済的な困難や社会の枠組みに囚われず、自らのアイデンティティと向き合い続けるきららさんの姿は、私たちに多様な生き方とその価値を問いかけます。この物語は、30周年を迎える番組がこれまで紡いできた「人」のドラマの真髄を示すものです。
参考文献
- フジテレビ (C)フジテレビ – 『ザ・ノンフィクション』公式サイト
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/99d22d35b7a170cddd7e18e568d667c5b37b34dc
- マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20250829-kirarasan/