日本の優秀な若者、なぜ医学部に偏重?海外大生起業家が語る人材流出の危機

インフルエンサーであり、イタリア名門大学の現役生、そして海外留学支援サービス「MMBH留学」を立ち上げた実業家でもある岸谷蘭丸氏は、日本の学歴トップ層における「医学部偏重」の現状に対し警鐘を鳴らしています。成績優秀な若者たちがこぞって医学部を目指す背景には何があるのか、そしてそれが日本の未来にどのような影響をもたらすのか。彼はこの現象を「もったいない」と表現し、日本の抱える深刻な人材流出のリスクと、その解決策について自身の見解を語りました。

東大理三レベルの優秀な人材が直面する選択肢の偏り

岸谷氏は、日本において最も学力のある学生が医学部を目指す傾向にある現状を「偏っている」と指摘します。医師になりたいわけではないのに、単に偏差値の最上位だからという理由で医学部を選ぶ学生が少なくないといいます。彼は、もし東大理三レベルの超優秀な若者の半分がコンピュータサイエンスや先端工学といった分野に進んでいれば、日本から世界を変えるような起業家がもっと多く生まれていたかもしれないと述べ、この状況を「マジもったいない」と強く感じています。

アメリカでは、トップ層の多くがITやテック系に流れるのが一般的です。これは、これらの分野が今最も成長しており、イノベーションと高報酬が集中しているためです。対照的に、日本には東大理三レベルのコンピュータサイエンス学部が存在しないこと自体が問題であると岸谷氏は強調します。医学という学問の重要性は疑いようがないものの、社会の変化が激しい現代においては、新しい分野での挑戦が不可欠です。優秀な人材が、より自由に、柔軟に分野を選択し、流動できる仕組みの必要性が問われています。

岸谷蘭丸氏、日本の学歴トップ層における医学部偏重と人材流出問題について語る岸谷蘭丸氏、日本の学歴トップ層における医学部偏重と人材流出問題について語る

研究職や博士課程へのインセンティブ不足が招く「コンサル」集中問題

日本の抱えるもう一つの大きな問題として、岸谷氏は研究職や博士課程へのインセンティブがほとんどないことを挙げます。このため、結果的に多くの優秀な学生がコンサルティング業界へ流れてしまう現象が起きています。コンサルタント職自体は決して悪い選択肢ではないものの、「研究で未来を変える」「技術で社会を変える」「公共に貢献する」といった選択肢が十分に魅力的な報酬によって支えられていないのが現状です。

この状況を改善するためには、博士課程への支援や研究職への投資を大幅に増やすことが不可欠であると岸谷氏は訴えます。日本は先進国の中でも博士課程への投資がかなり低水準にあり、それが技術革新やイノベーションが生まれにくい原因の一つにもなっていると考えられます。

最近話題になった、博士課程学生への生活費補助を「日本人に限定し、留学生は除外する」という制度変更の方針についても、岸谷氏はその方向性に疑問を呈しています。日本人学生の進学者が少ないから外国人学生が増えているだけであり、優秀な人材が研究に貢献してくれるのであれば、国籍は関係なく歓迎すべきだというのが彼の見解です。日本人博士課程進学者の減少という本質的な課題があるにもかかわらず、「外国人への支出が多すぎる」という点ばかりが注目されるのは問題の本質を見誤っていると指摘します。

「日本人ファースト」は真の国益か?博士課程支援策への疑問

岸谷氏は、「外国人が多いのは問題だ」といった空気で縛り付けるような考え方は、単なる「見せかけの日本人ファースト」でしかないと強く批判します。このような視野の狭い議論が繰り広げられることで、日本の技術力はますます国際競争の中で埋もれていくと警鐘を鳴らしています。このような状況で、誰がわざわざ博士課程に進学しようとするのか、と彼は疑問を投げかけます。

特に博士課程には、国の技術力を担うような超優秀な人材が集まっています。彼らが気持ちよく社会に貢献できるような環境を整備することが、日本の将来にとって極めて重要です。これは研究者に限った話ではなく、政治家や官僚といった職種にも通じる問題だと岸谷氏は述べます。「給料は少ないけれど使命感だけで頑張ります」という働き方は、長期的に持続可能ではありません。このままでは、トップ層の人材はますます海外へ流出し、あるいは日本国内でその能力を発揮できないまま終わってしまうでしょう。一般の労働者とは異なる立場で、声を上げにくい彼らの働き方や貢献に見合った環境についても、真剣に考えるべきだと岸谷氏は結びました。

結論

岸谷蘭丸氏の指摘は、日本の教育、科学技術、そして人材政策が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。学歴トップ層の医学部偏重、研究職や博士課程への投資不足、そして国際的な視点に欠ける「日本人ファースト」といった政策は、優秀な人材の国外流出や国内での能力未発揮を招き、日本の国際競争力やイノベーション創出能力を低下させるリスクを高めます。日本の未来を担う人材が、自身の能力を最大限に発揮し、社会に貢献できるような柔軟で魅力的な選択肢、そして十分なインセンティブが提供される環境を整備することが、喫緊の課題として求められています。

参考資料