ウクライナ軍は、ロシア国内に位置する戦略的に重要な2本の橋を破壊したと発表しました。この作戦では、安価な無人航空機(ドローン)を数機使用し、ロシア軍が現場に隠していた地雷や弾薬を意図的に爆破させるという、極めて巧妙かつ費用対効果の高い戦術が用いられました。
ウクライナ北部ハルキウ州との国境付近に位置するこれらの橋は、ロシア軍にとって部隊への補給路として不可欠な役割を担っていました。
戦略的要衝の破壊とその背景
破壊された2本の橋は、ロシア軍がウクライナの突然の侵攻に備え、自ら爆破する選択肢を確保するために地雷を仕掛けていた戦略的な地点でした。攻撃を受けた側が敵の進撃を阻止するために自国領内の橋や道路などの主要インフラを破壊する行為は、軍事作戦において珍しくありません。実際、ウクライナも2022年2月のロシアによる本格侵攻の初期段階で、首都キーウへ続く道路の橋を破壊し、ロシア軍の進撃を遅らせることでキーウ防衛に貢献しました。
今回のケースでは、ウクライナ軍はロシア軍が仕掛けた地雷の隠し場所を事前に特定し、それらを自軍にとって有利な形で利用するという、戦略的な優位性を確立しました。
ウクライナ軍のドローン攻撃により破壊されたロシア国内の戦略的橋梁
巧妙なドローン作戦の全貌
この作戦を遂行したのはウクライナ第58独立機械化歩兵旅団です。旅団はCNNに対し、橋周辺で異常な動きを察知したことから、詳細な調査を開始したと述べました。通常の偵察ドローンでは信号が途切れてしまうため、光ファイバーを搭載した一人称視点(FPV)ドローンを使用して橋に接近しました。
ドローンが撮影した動画には、大量の対戦車地雷やその他の弾薬が隠されている様子が鮮明に映し出されていました。隠し場所を覆っていたと思われる布切れが横に転がっているのも確認できます。ドローンがこの隠し場所に衝突した瞬間、映像は途切れました。しかし、少し離れた場所から別のカメラが撮影した映像には、大規模な爆発が発生する様子が記録されており、CNNは、この爆発がウクライナ国境に近いロシア南部ベルゴロド州の橋で起きたものと特定しました。
旅団の代表者は、「その後、我々はもう一方の橋も調査することにし、そこにも地雷が仕掛けられていたため攻撃した」と語り、「好機を捉え、それを逃さなかった」と付け加えました。
戦況と費用対効果への影響
この橋の破壊と、それを成し遂げた大胆かつ革新的な方法は、ウクライナ政府にとって久々に明るいニュースとなりました。現在、ロシアのプーチン大統領が停戦交渉を先送りし続ける中、ロシア軍は前線で徐々に前進を続けており、ウクライナ軍は厳しい戦況に直面しています。同時に、ロシアはウクライナ全土の都市に対してほぼ毎日空爆を行い、民間人の犠牲者を出し続けています。
CNNの取材に対し、第58独立機械化歩兵旅団の代表者は、攻撃に使用されたドローンの価格が1機あたり600~725米ドル(約8万8000~10万6000円)であったと明かしました。これは、遠くから橋を破壊するために通常用いられる高価な誘導兵器や、ミサイルランチャー、航空機といった高度なシステムと比較して、極めて費用対効果が高いことを示しています。今回の2度の攻撃は、限られた予算の中で最大限の戦果を上げるための、ウクライナ軍の創意工夫と戦術的優位性を象徴する出来事と言えるでしょう。ロシア側は、これらの橋への攻撃について今のところコメントを発表していません。