佐賀・多久市長選迫る:人口減少と高齢化が進む「消滅可能性都市」の課題と未来

来る8月31日に市長選が告示される佐賀県多久市は、県内10市の中で最も人口が少なく、深刻な人口減少と高齢化に直面しています。地域経済を支えてきた商店やスーパーの撤退が相次ぎ、市民生活に大きな影を落としています。待ったなしの喫緊の課題が山積する中、市民からは「住民の暮らしを守りながら、豊かな自然や観光資源といった多久市の魅力を最大限に生かした市政運営を」と、次期市長への期待と切実な願いが寄せられています。

衰退する商店街:かつての賑わいと現状

今月下旬の夕方、JR多久駅に近い「京町商店街」(北多久町)を訪れると、人影はまばらで、道の両側にはシャッターが降りた店舗がずらりと並んでいました。地元住民によると、この商店街は炭鉱産業の隆盛期に人口が急増したことを背景に、1955年頃に誕生したといいます。全盛期にはスーパーや書店など約40店舗以上が軒を連ね、地域住民の生活を支える賑やかな商業の中心地でした。しかし、1972年の炭鉱閉山を境に客足は減少し始め、店主の高齢化や新型コロナウイルス感染症の拡大が追い打ちをかけ、現在では営業を続けているのはわずか5店舗ほどに。70代の女性店主は「お客さんが一人も来ない日も珍しくない。商売はもう手詰まりだ」と嘆いています。

シャッターが降りた店舗が並び人通りが少ない佐賀県多久市の京町商店街シャッターが降りた店舗が並び人通りが少ない佐賀県多久市の京町商店街

深刻な人口減少と高齢化:未来への危機感

多久市の人口は、1960年のピーク時には4万5627人を数えましたが、以降右肩下がりを続け、今年7月時点の推計人口は1万6874人と、最盛期の約3分の1にまで落ち込んでいます。同時に高齢化も急速に進んでおり、市全体の高齢化率は39.1%、特に西多久町では49.1%に達しています。昨年、民間組織「人口戦略会議」が公表した「消滅可能性都市」リストには、佐賀県内の市で唯一、多久市が含まれるという厳しい現実が突きつけられました。かつて市内には衣料品量販店やファミリーレストランチェーンなども進出していましたが、人口減少などを背景に約10年で撤退。昨年には多久町にあった地域密着型のスーパーも閉店し、市民の利便性は低下しています。市は本年度から、子育て・若者世帯が市内で住宅を取得する際の定住奨励金を100万円に増額したり、第2子以降の保育料無償化を実施するなど、定住促進に力を入れていますが、その効果についてはまだ未知数です。

地域活性化への挑戦:温泉施設「TAQUA」と市民の期待

こうした状況下で、多久市が交流人口増加を通じた地域活性化の拠点として位置づけているのが、北多久町にある温泉宿泊施設「天山多久温泉TAQUA(タクア)」です。経営不振により閉館していたこの施設の土地・建物を市が取得し、約18億円をかけて大規模改修を実施。長崎市の業者に10年間無償で貸し出す形で、2018年に再オープンしました。福岡と長崎の中継地点という地の利を生かし、長崎自動車道多久ICから車で約10分という好立地を武器に利用客増を図っています。しかし、昨年度の利用者数は約9万1千人と、オープン当初の2019年度の約10万7千人を下回る結果となり、市は「市と運営事業者の双方が危機感を共有し、この難局を乗り越えていかなければならない」と危機感を募らせています。多久市区長会の伊川照明会長(77)は「人口を増やすのは難しいという現実を前提とした施策が必要だ。豊かな自然環境や、日本三大孔子廟の一つである多久聖廟など、地域の独自の魅力を県内外に積極的にアピールすべきだ」と、新たな市政に期待を寄せています。


参考文献

  • 西日本新聞