日本政府は、来月3日に中国が迎える「抗日戦争勝利記念日」を前に、中国に滞在する自国民に対し、行動に細心の注意を払うよう呼びかけています。中国政府がこの記念日を契機に再燃させる「抗日精神」が、反日感情や嫌日犯罪へと繋がる懸威があるとの見方から、日本人と特定されやすい言動を避けるよう促すものです。特に、近年中国国内で日本人を標的とした凶悪事件が相次いでいることが、今回の異例ともいえる厳重な警戒喚起の背景にあります。
在中国日本大使館による具体的な安全対策の呼びかけ
在中国日本大使館は先月27日、公式ホームページを通じて、「日中間の歴史にかかわる日は、中国人の反日感情が特に高まりやすく、注意が必要だ」と警告を発しました。具体的には、「日本語の使用を控え、日本風の服装の着用を避ける」ことに加え、「多くの日本人が利用すると思われやすい場所は可能な限り避ける」「一見して日本人と推測される物を携帯したりすることを避ける」といった行動指針が示されています。また、不審な人物や集団を見かけた際には、決して近づかず、速やかにその場を離れるよう強く勧告しています。これらの指示は、在留邦人の安全確保を最優先とする日本政府の強い意志を示すものです。
背景にある度重なる日本人狙いの犯罪
日本政府がこれほどまでに神経を尖らせる背景には、最近中国で発生した日本人を標的とした複数の犯罪事件があります。中でも昨年9月、広東省深圳で発生した日本人学校に通う10歳の小学生が中国人の男に凶器で刺され死亡した事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。この事件が起きた9月18日は「満州事変」の勃発日という歴史的な意味合いを持つ日で、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」と同様に反日感情が高まる時期と重なります。深圳地裁は今年1月、「インターネットで注目を集めるために罪のない児童を殺害した」として犯人の男に死刑を宣告し、その3カ月後には刑が執行されました。
同年6月には、江蘇省蘇州市で中国人男性が日本人学校のスクールバスを刃物で襲撃し、日本人母子が負傷する事件が発生しています。さらに7月末にも、同じ蘇州市で子ども連れの日本人女性が石のようなもので殴られる事件が起きています。これらの事件を受け、日本大使館は今回の公示で「特にお子様連れの場合には十分に対策をとるようご注意ください」と、子供を持つ家庭への特別な注意を促しています。
中国・深圳の日本人学校前に捧げられた花束。2024年9月に発生した日本人小学生殺害事件への追悼と、在留邦人の安全を願う心情が込められている。
高まる不安と日系企業の対応、学校への影響
昨年相次いだ反日犯罪の後、ロイター通信によれば、中国に拠点を置く日系企業の中には、駐在員の一時帰国を認めるなどの措置を取る動きも見られました。日本外務省も、日本人学校の登下校時間や日系企業の出退勤時間に合わせてバス停などの防犯を強化し、警備員の配置に4300万円を投じたことを明らかにしています。しかし、中国国内の日本人社会の不安は容易には解消されていません。日本メディアの報道によると、今年の春、中国国内の日本人学校11校の児童・生徒数は前年比11%減の3226人となり、減少傾向が顕著です。
今回の「抗日戦争勝利記念日」に関連する行事は、大都市だけでなく地方都市でも実施されることが予想されており、大使館からの今回の警告は一時的なものにとどまらないとの見方も出ています。在留邦人にとって、依然として中国での生活には予断を許さない状況が続いており、引き続き政府からの情報に注意を払い、自身の安全を最優先に行動することが求められています。
参考文献
- ロイター通信 (Reuters)
- 日本経済新聞
- 在中国日本大使館 公式ホームページ
- ヤフーニュース (Yahoo! News)
- 中央日報日本語版 (Korean JoongAng Daily)