全国の中古車販売店が前例のない倒産ラッシュに見舞われており、業界全体がビジネスモデルの大胆な変革を迫られています。東京商工リサーチの調査によると、2024年度の全国での中古車販売店の倒産件数は98件に達し、これは過去13年間で最多を記録しました。近畿地方でも15件と高水準で推移しており、この厳しい現状は日本の経済ニュースにおいて重要な焦点となっています。
大阪市内の路上に展示された中古車。仕入れ価格高騰で販売店の経営を圧迫している
小規模事業者を襲う倒産急増の現実
東京商工リサーチ関西支社情報部の新田善彦氏が指摘するように、2024年度の倒産件数の大半は負債総額1億円未満の小規模事業者によるものです。これは、経営体力に乏しい中小販売店が現在の市場環境の煽りを受けていることを明確に示しています。全国の倒産件数は、2023年度の71件から約38%増加。近畿2府4県では2024年度に15件を記録し、2022年度の7件から倍増しています。特に大阪府では2024年度に7件の倒産があり、近畿全体の傾向と一致しています。これらの数字は、中古車販売市場における深刻な構造的課題を浮き彫りにしています。
仕入れ価格高騰と在庫確保の困難
倒産増加の背景には、中古車の仕入れ価格の著しい高騰があります。奈良県のある中古車販売店関係者は、「価格を高くせざるを得なくなっているので、なかなか売れない」と苦しい胸の内を明かしています。かつては敷地に多数並んでいた販売用の車両も、ここ数年で目に見えて減少しました。大阪府の別の業者も顧客に対し、「在庫を減らしているので、希望に沿える車種をすぐ用意できるか分からない」と伝えざるを得ない状況です。
中古車競売大手ユー・エス・エス(USS)のデータによると、同社が手掛けるオークションでの今年2月の平均落札価格は126万円と過去最高を更新しました。2024年度全体でも前年度比1割以上高い120万6千円となっており、この高騰が中小販売店の経営を一層圧迫しています。彼らは大手のように安価で大量に仕入れることができず、価格を下げれば利益が確保できないというジレンマに陥っています。
多角的な要因が絡む仕入れ価格上昇の背景
仕入れ価格が高騰している主な要因は複数あります。まず、新型コロナウイルス禍や半導体不足によって新車の生産が減少し、その結果として中古車への需要が高まったことが挙げられます。さらに、円安の進行により、相対的に安価で質の良い日本の中古車を求める海外業者の参入が増加。これにより、オークションでの競り合いが激化し、落札価格が押し上げられる構造が生まれています。
ビッグモーター問題の長期的な余波と業界変革の必要性
2023年に発覚した中古車大手、旧ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求問題も、業界全体に長期的な余波をもたらしています。この問題は消費者の中古車販売店に対する信頼を大きく揺るがし、ただでさえ厳しい経営環境にさらされていた中小販売店にとって、さらなる逆風となりました。
これらの複合的な要因が絡み合い、中古車販売業界はまさに激動の時代を迎えています。仕入れ価格の高騰、海外からの競争激化、そして信頼回復という課題が山積する中、既存のビジネスモデルでは生き残りが困難な状況です。業界全体として、仕入れルートの多様化、オンライン販売の強化、顧客サービスの見直し、そして新たな価値提案など、これまでの枠を超えた「大胆な変革」が喫緊の課題となっています。この変革こそが、厳しい市場を生き抜き、持続的な成長を遂げるための鍵となるでしょう。
参考文献:
- 東京商工リサーチ
- ユー・エス・エス (USS)
- Yahoo!ニュース (記事掲載元)