ウクライナ北部および南部では、8月30日夜から31日にかけ、ロシア軍による無人機(ドローン)を用いた電力施設への攻撃が相次ぎ、約6万人が停電に見舞われる事態が発生しました。これに対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア領内深部への報復攻撃を示唆し、事態のさらなる緊迫化が懸念されています。
ロシアによる電力施設への大規模攻撃
ロシアは8月30日夜から31日未明にかけて、ウクライナ全土にわたる大規模なドローン攻撃を実施しました。ウクライナ軍の発表によると、攻撃に使用された無人機は合計142機に上り、その大半は迎撃されたものの、少なくとも10カ所の施設が攻撃を受けました。ロシア国防省は、これらの攻撃が軍事目的で使用される港湾インフラを標的としたものであると主張しています。
オデーサ州とチェルニヒウ州の深刻な被害状況
最も被害が深刻だった地域の一つは南部オデーサ州です。同国のエネルギー大手DTEKは、オデーサ州内のエネルギー施設4カ所が夜間攻撃を受け、その結果、31日午前時点で約2万9000人が停電していると発表しました。特に港湾都市チョルノモルスクでは、州知事の報告によれば、住宅や行政の建物にも甚大な被害が及んでいます。
一方、北部チェルニヒウ州も31日未明に激しい攻撃を受けました。州知事によると、エネルギーインフラが損傷し、約3万世帯が停電に見舞われるなど、広範囲にわたる電力供給網への影響が出ています。
ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアによる電力施設へのドローン攻撃に対し報復を表明(キーウ、2025年8月25日撮影)
ゼレンスキー大統領の「深部報復」表明
これらの攻撃を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、オレクサンドル・シルスキー軍総司令官との会談後、自身のX(旧ツイッター)アカウントを通じて声明を発表しました。大統領は「ウクライナ防衛に必要な形で積極的な作戦を継続する。戦力とリソースは準備ができている。深部への新たな攻撃も計画している」と投稿し、ロシア領内への報復攻撃を明確に示唆しました。この発言は、ウクライナがロシアのエネルギーインフラ攻撃に対し、同様の手段で対抗する可能性を示唆しており、今後の戦況に大きな影響を与える可能性があります。
結論
ロシアによるウクライナの電力施設へのドローン攻撃は、広範囲にわたる停電とインフラへの損害を引き起こし、市民生活に深刻な影響を与えています。これに対するゼレンスキー大統領の「深部報復」表明は、紛争の地理的範囲と激しさがさらに拡大する可能性を示しており、国際社会の懸念を深めることとなります。今後の両国の動向が注目されます。
参考文献
- Reuters (2025年8月31日). ウクライナ、電力施設へのドローン攻撃で6万人停電。ゼレンスキー大統領が報復表明.