ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議において、ウクライナにおける「特別作戦」を正当化する姿勢を鮮明にした。大統領は、数万人の命を奪い、ウクライナ東部の広範囲を荒廃させた3年半にわたるこの紛争の責任は、欧米諸国にあると強く非難した。彼の発言は、国際社会におけるロシアの立場と、今後の世界秩序に対するビジョンを示すものとして注目される。
上海協力機構(SCO)首脳会議に出席し、ウクライナ危機に関するロシアの立場を表明するプーチン大統領
ウクライナ危機の根源:西側主導のクーデターとNATO拡大
プーチン大統領は、現在のウクライナ危機がロシアの侵攻によって引き起こされたものではないと主張した。彼は「この危機は、西側諸国が支持・挑発したウクライナでのクーデターの結果だ」と述べ、2013年から2014年にかけて親欧州派が主導した「マイダン革命」を指している。この革命は、親ロシア派の大統領を追放する結果となり、ロシアはこれに対し、クリミア半島の併合やウクライナ東部の親ロシア派分離主義者への支援を通じて介入し、内戦へと発展した経緯がある。
さらにプーチン大統領は、危機の第二の理由として「西側がウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に引き込もうとする絶え間ない試み」を挙げた。NATOの東方拡大は、ロシアが長年自国の安全保障に対する脅威と見なしてきた問題であり、今回の紛争における核心的な原因の一つであるとの認識を示した。
時代遅れのモデルからの脱却と多極世界の提唱
プーチン大統領はまた、現在の国際システムに対する深い不満を表明し、より広範な国々の利益を考慮に入れた新しい世界秩序の必要性を訴えた。「世界には、時代遅れのユーロセントリックおよびユーロアトランティックモデルに代わるシステムが必要であり、最も広範な国々の利益を考慮に入れるべきだ」と述べ、欧米中心主義的な既存の国際秩序からの脱却を提唱した。これは、新興国や非欧米諸国の影響力が増大する「多極化世界」の到来を強調するものであり、ロシアがその中で重要な役割を果たす意思を示唆している。
大統領は、中国、インド、そして他の戦略的パートナーによるウクライナ危機解決への努力と提案を高く評価していると強調。これは、欧米諸国以外の国々との連携を強化し、国際的な外交舞台においてロシアの立場を支持する勢力を結集しようとする戦略の一環と見られる。
SCO首脳会議の舞台裏と今後の動向
今回のSCO首脳会議の場は、プーチン大統領がこうした主張を展開する上で重要な意味を持つ。SCOは中国、インド、ロシア、パキスタン、イラン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、ベラルーシで構成され、さらに多くの国がオブザーバーや「対話パートナー」として参加する、ユーラシア地域における主要な安全保障・経済協力機構である。この枠組みを通じて、ロシアは非西側諸国との関係を深め、国際的な孤立を回避しつつ、自国の国際的な影響力を拡大しようとしている。
プーチン大統領は会議後、インドのナレンドラ・モディ首相、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領と個別に会談する予定であり、これら主要国との連携を強化することで、ロシアの提唱する新しい世界秩序の構築に向けた具体的な外交努力を進めるものと見られる。