オーディション落選者が大手企業に続々起用される新潮流:「timelesz project」が変えるエンタメ業界

近年、オーディション番組で惜しくも選考から漏れた才能が、大手企業によって次々と起用される新たな潮流が生まれている。特に注目されるのは、人気アイドルグループSexy Zone(現timelesz)が新メンバーを公募した「timelesz project -AUDITION-」(通称・タイプロ)だ。このプロジェクトでは、1万8922人の中から選ばれた5人の新メンバーだけでなく、選ばれなかった候補生たちも、花王、ソフトバンク、ホリプロといった大手企業のWEB CMやイベントで活躍の場を見つけている。これは、一つの場所で選ばれなくても、別の場所で輝けるという、エンターテインメント業界における「セカンドチャンス」の重要性を示唆している。

「タイプロ」が示した新たな可能性:落選者にも光が当たる時代

「タイプロ」をきっかけに、多くの候補生たちが新たな活躍の場を得ている。例えば、花王EssentialのWEB CMには、タイプロのオーディションに参加したメンバーで結成されたユニット「ROIROM」が起用され、その魅力的なパフォーマンスが話題を呼んだ。これは、オーディションの最終選考で選ばれなかったとしても、その過程で培われた才能や個性、そして視聴者からの熱い支持が、新たなビジネスチャンスに繋がることを明確に示している。筆者の周囲でも、「タイプロ」を通じて初めて「推し」を見つけたという声が多く聞かれ、オーディションが単なる選抜の場ではなく、才能の発見と育成、そして新たなファン層の開拓の場となっていることがうかがえる。

花王EssentialのWEB CMに登場するオーディション落選者ユニット「ROIROM」のパフォーマンス花王EssentialのWEB CMに登場するオーディション落選者ユニット「ROIROM」のパフォーマンス

現役アイドルが主導する「仲間探し」の革新性

「タイプロ」の最大の特長は、デビュー13年、ドーム公演も経験した現役アイドルであるtimeleszの佐藤勝利、菊池風磨、松島聡の3人が、自ら審査員となり、新メンバーを探すという前代未聞の試みだった点にある。この選考過程は約半年間、Netflixでドキュメンタリーとして配信され、Netflix内ランキングで複数回1位を獲得し、X(旧Twitter)では毎回トレンド入りするなど、大きな注目を集めた。これにより、これまでベールに包まれていたアイドルの想いや努力、そしてグループの裏側が広く公開され、視聴者は候補生だけでなく、メンバー一人ひとりの熱量や葛藤にも共感し、深く感情移入することができた。この透明性の高いプロセスが、候補生一人ひとりに確固たるファンをつけ、彼らのその後の活動の土台を築いたと言えるだろう。

新生timeleszの目覚ましい躍進と業界への影響

2024年2月15日、最終結果が発表され、寺西拓人、原嘉孝、橋本将生、猪俣周杜、篠塚大輝の5名が新たにtimeleszに加入し、8人組として再スタートを切った。新生timeleszはその後、目覚ましい躍進を続けている。アルバム『FAM』は初週61.9万枚(オリコン調べ)を売り上げ、ビルボード総合アルバムチャートで1位を獲得。さらに、『タイムレスマン』(フジテレビ系)、『timeleszの時間ですよ』(TBS系)といった冠番組が放送され、10月からは日本テレビで『timelesz ファミリア』の放送も決定している。アリーナツアー「We’re timelesz LIVE TOUR 2025 episode 1 〜FAM〜」の開催に加え、年末年始のドームライブも発表されるなど、その活動は記憶にも記録にも残り、エンターテインメント業界に新たな歴史を刻んでいる。

オーディション番組の「落選者」が多様な形で再評価され、活躍の場を広げている現象は、「タイプロ」が示した「一つのゴールが全てではない」というメッセージを具現化している。これは、才能ある人材が一度の失敗で終わることなく、多様な形で輝ける機会が提供されるべきだという、エンターテインメント業界全体の新たな価値観を提示していると言えるだろう。

参考文献