トランプ政権、米宇宙軍司令部の移転を計画か:コロラドからアラバマへ

トランプ米政権が、米宇宙軍司令部をコロラド州コロラドスプリングズからアラバマ州ハンツビルへ移転する計画を進めていることが、複数の関係筋への取材で2日明らかになりました。この動きは、前バイデン政権が宇宙軍司令部の恒久的な設置場所としてコロラドスプリングズを決定していた経緯と対照的であり、今後の米国防政策における重要な転換点となる可能性があります。

移転計画の詳細と過去の経緯

米国防総省は当初、トランプ大統領が2日米東部時間午後2時(日本時間3日午前3時)に「米宇宙軍司令部を巡る発表」を行うとウェブサイト上で表明していましたが、その後この情報は削除されました。この突然の削除は、移転計画の実施における政治的な複雑さや議論の存在を示唆しています。バイデン前大統領は2023年に、宇宙軍司令部をコロラドスプリングズに恒久的に配置すると正式に決定していました。これは、国家安全保障上の継続性と効率性を重視した判断と見られていました。

米宇宙軍は、トランプ第1次政権下の2019年に設立された新しい軍種で、宇宙空間における米国の防衛と利益を守ることを目的としています。司令部は現在、コロラドスプリングズのピーターソン宇宙軍基地に暫定的に置かれており、議会記録によれば約1700人の職員が勤務しています。今回の移転計画が実現すれば、宇宙軍の運用体制や戦略にも大きな影響を与えることは避けられないでしょう。

ワシントンのケネディ・センターで演説するドナルド・トランプ元大統領。米宇宙軍司令部の移転計画が報じられた背景。ワシントンのケネディ・センターで演説するドナルド・トランプ元大統領。米宇宙軍司令部の移転計画が報じられた背景。

ハンツビルの戦略的利点と政治的背景

移転先として計画されているアラバマ州ハンツビルは、「ロケットシティ」の異名を持つ米国の宇宙開発の中心地の一つです。ここには、航空宇宙局(NASA)のマーシャル宇宙飛行センターや、L3ハリスなどの主要な防衛関連企業が拠点を構えており、宇宙産業の集積地として知られています。ロッキード・マーティンをはじめとする防衛大手は、宇宙軍司令部の移転を求めるロビー活動を積極的に展開してきました。

トランプ政権側は移転計画の理由を公式には明らかにしていませんが、一部では、大統領選挙でトランプ氏を支持した州に報いる一方、反対した州を阻害する、という政治的な意図が背景にある可能性が指摘されています。このような政治的判断が、国家安全保障上の重要な施設である宇宙軍司令部の配置に影響を与えることについては、米国内で議論が巻き起こることも予想されます。

移転に伴う課題とコスト

国防関係筋によると、宇宙軍司令部の移転には数億ドル規模の費用がかかり、完了までには数年を要する見込みです。巨額な費用と長期にわたる期間が必要となるため、移転計画の実行には議会の承認と広範な支持が不可欠となります。また、大規模な組織の移転は、職員とその家族の生活、地域の経済、そして宇宙軍の作戦遂行能力にも影響を及ぼすため、慎重な計画と実行が求められるでしょう。

結論

トランプ政権による米宇宙軍司令部の移転計画は、単なる地理的な移動に留まらず、米国の国防戦略、政治的力学、そして宇宙空間における安全保障体制に多岐にわたる影響を与える可能性を秘めています。コロラドスプリングズからハンツビルへの移転が実現するかどうか、その動機と結果は、今後の米国の国内外の動向を読み解く上で注目すべきポイントとなるでしょう。

参考文献

  • ロイター (2025年9月2日)