(ブルームバーグ): 今年の夏はトランプ米大統領によるリベンジの季節と言えそうだ。
トランプ氏は、政敵に報復するという自身の約束を実行に移している。しかし、その怒りは政府全体に広がり、自分の政策に少しでも支障を来す恐れのある人々にも矛先が向けられている。
ここ数週間には、敵対者に対し情報閲覧に必要なセキュリティークリアランス(機密情報へのアクセス資格)の剝奪や捜査開始に踏み切ったり、SNSでの脅しによって威嚇したり、独立政府機関の幹部までも解任しようとしている。
連邦捜査局(FBI)は22日、トランプ政権1期目の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)で、かねて政権を批判しているジョン・ボルトン氏の自宅を家宅捜索した。トランプ氏自身は関与を否定し、政権当局者はボルトン氏による機密情報の取り扱いに正当な懸念があると主張しているとはいえ、事態のエスカレーションを印象づけるものだ。
クック連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を目指すトランプ氏の動きは、中央銀行そのものへの直接的な攻撃と受け止められている。
政権当局者はこれについて、クック氏が住宅ローン申請書類を巡り不正を働いたとの疑惑に対応するものだと主張している。だがトランプ氏は、クック氏を排除すればFRBで過半数を掌握できると述べている。
トランプ氏は、自身の利下げ注文に応じない連邦準備制度を以前から激しく批判。クック氏は、トランプ氏が目の敵にしているパウエルFRB議長と共に金利据え置きに票を投じてきた。
これらはいずれも異例の動きだ。リチャード・ニクソン氏以来、ここまで広範に自らの敵と見なした相手に対し、大統領権限を行使した例はなかった。また、一連の行動は、報復を追求するというトランプ氏の誓いが単なる選挙戦中の大言壮語ではなかったことを明確に示している。
自分自身や支持者に対して政治的動機に基づく捜査や訴追が長年行われてきたと感じてきたトランプ氏は、今や自らの前に立ちはだかる者を容赦なく排除しようとしている。