オリンピックに3大会連続出場し、男子400mハードルの日本記録保持者である元陸上選手の為末大氏。世界的な大舞台で最高のパフォーマンスを発揮し続けた彼が語る、「勝負強さ」の秘訣は、ビジネスパーソンがプレゼンや交渉など、重要な場面で力を最大限に引き出すための貴重な示唆に富んでいます。ノンフィクション作家の笹井恵里子氏が、その核心に迫りました。
「勝負強さ」の核心:期待値コントロール
為末氏によれば、「勝負強さ」とは、まさに「期待値コントロール」であると言います。緊張している時、多くの人は「完璧にうまくやろう」としすぎている傾向があります。しかし、「その日の自分にできることしかできない」という現実を受け入れることが、不必要なプレッシャーから解放される第一歩です。
緊張が手放せない時は、「自分はそこまで大した人間なのか」と自問自答してみるのも良いでしょう。為末氏は現役時代、「ここまで来られただけでも十分。あとはやれることをやるだけだ」と自分に言い聞かせ、精神的な負荷を軽減していたと語ります。自己への過度な期待を手放し、等身大の自分を受け入れることが、真の力を発揮する鍵となります。
元陸上選手為末大氏が、ビジネスシーンで役立つプレッシャー克服術を解説
プレッシャー克服の鍵:自己認識と弱さの受容
プレッシャーは、人が「こう見られたい理想の自分」と「本来の自分」とのギャップが露見することを恐れる時に生じます。もし自分のすべてが他者に理解されていると感じる場であれば、プレッシャーは感じにくいものです。
為末氏は、陸上競技の体育会系文化では、あだ名や弱点を指摘し合うことで、自分を取り繕う姿勢をなくし、「等身大で生きる」ことを学んだと説明します。これは一般社会では推奨される手法ではありませんが、「自分が最も人に知られたくないこと」を自覚しておくことは有効です。自分の「弱い部分」を認識するだけで、客観的な視点を得られ、プレッシャーの世界から一歩引いて状況を冷静に捉えることができるようになります。
他者の視点への洞察
また、為末氏は「思ったよりも自分は人を見ていない」という事実に気づくことの重要性を指摘します。これは、他者もまた、我々が思うほど自分のことを細かく見ていない、あるいは気に留めていないという洞察を示唆しています。この理解は、他者の評価を過度に恐れる気持ちを和らげ、結果としてプレッシャー軽減に繋がります。
結論
為末大氏の経験から学ぶ「勝負強さ」の秘訣は、過度な期待値をコントロールし、自己の弱さを認識し受け入れること、そして他者の視点を冷静に理解することに集約されます。これらの精神的な準備は、ビジネスの重要な局面において、平常心を保ち、自身のパフォーマンスを最大限に引き出すための強力な武器となるでしょう。
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