かつてペットといえば犬か猫が主流でしたが、近年、日本の都市部を中心に「小動物」との暮らしが静かに広がりを見せています。ハムスター、文鳥、ヒョウモントカゲモドキ(レオパ)、ハリネズミ、デグーなど、その種類は多岐にわたります。ペット不可や小動物のみ可の集合住宅でも受け入れられやすく、共働き世帯、単身者、子育て家庭といった多様なライフスタイルにも柔軟にフィットするため、都市生活における新たな家族の形として注目されています。本連載では、「犬でも猫でもない家族」、そして異種間の共生を選ぶ人々に焦点を当て、制約の多い現代社会で見つけられた“静かで確かなつながり”を紐解きます。今回は、ウサギと猫と共に暮らす男性、やすさん(仮名)の物語を通して、その魅力と可能性を探ります。
都市生活にフィットする「小動物」という選択肢
都市部での生活は、住居の広さや規約、日中の不在時間など、ペットを飼育する上での制約が少なくありません。そうした中で、比較的手間がかからず、スペースも取りにくい小動物は、多くの人にとって現実的かつ魅力的な選択肢となっています。彼らは、飼い主の多様なライフスタイルに寄り添いながら、かけがえのない癒やしと喜びをもたらしてくれます。本記事は、そうした小動物との共生を深掘りするシリーズの第2回であり、特にウサギと猫という異種動物を共に飼育するやすさんの体験談は、都市型ペットライフの新たな地平を示すものと言えるでしょう。(本記事は後編です。前編では、ウサギの便秘対策に草を育てるYouTuberの日常が紹介されました。)
ウサギのぽぽちゃんに「弟分」を:多頭飼いへの挑戦
ウサギのネザーランドドワーフ「ぽぽちゃん」との暮らしを始めて1年が経った頃、飼い主のやすさんは、正式にペット可物件への引っ越しを決意しました。新しい部屋は、リビングの他に2部屋があり、ぽぽちゃんとの2人暮らしには十分な広さです。これまでの部屋と同じようにタイルカーペットを敷き詰めた一室をぽぽちゃんの専用スペースとし、襖で隔てられたもう一つの部屋にも同様にタイルカーペットを敷設。壁際に水飲み場、ベッド、排泄用の猫砂を配置し、新たな家族を迎える準備を整えました。やすさんは、ぽぽちゃんの「弟分」として、生後2カ月の子猫を迎えることを決めたのです。ウサギは本来、自然界では猫の天敵となりうる存在。なぜやすさんは、この異種間の組み合わせを選び、そして本当に共生は可能なのかという疑問が湧きます。
温和な性格が決め手:ノルウェージャンフォレストキャットの迎え入れ
やすさんは、幼い頃からの「ペットを飼うなら犬か猫」という憧れが忘れられなかったと語ります。ぽぽちゃんに一目惚れしてウサギを飼い始めましたが、次に家族を迎えるなら犬か猫が良いと考えていました。そこで、SNSなどでウサギと猫が共に暮らす事例を調査し、猫であれば共生が可能ではないかという結論に至ったそうです。猫の品種についても徹底的に調べ、その結果、性格が穏やかで我慢強いと定評のある「ノルウェー・フォレスト・キャット」を選択。信頼できるブリーダーから、健康で性格の良い子猫を迎えることにしました。この慎重なリサーチとブリーダー選びは、異種間の多頭飼いを成功させる上で極めて重要な要素となります。
モフモフの毛並みが特徴的な生後2カ月のノルウェージャンフォレストキャットの子猫。
やすさんが選んだノルウェー・フォレスト・キャットの子猫は、やがてぽぽちゃんにとってかけがえのない「弟分」となることでしょう。異なる種でありながら、互いを尊重し、支え合う「小さな家族」の絆は、現代の都市生活における新たな癒やしの形、そして多様な価値観を象徴しています。異種動物との共生は、適切な知識と準備、そして何よりも深い愛情があれば、実現可能な豊かなライフスタイルであることを、やすさんの物語は教えてくれます。この新しい家族の物語が、多くの読者にとって、ペットとの暮らし方、そして家族のあり方について考えるきっかけとなることを願います。
参考文献
- Yahoo!ニュース: 「便秘対策に草も自分で育てる」フォロワー24万人“ウサギ飼育系YouTuber”、溺愛の日常
- 東洋経済オンライン: 自宅にやってきたばかり、生後2カ月のノルウェージャンフォレストキャット