習近平国家主席が世界各国の首脳を迎えて大規模な軍事パレードを行う数日前、中国南西部の重慶で1人の中国人男性が異例の抗議行動を行った。SNS上に投稿された映像によれば、男性はプロジェクターを使って反共産党のスローガンを高層ビルに投影した。
「共産党がなくなってこそ新しい中国が築かれる」「赤色ファシズム打倒、共産党独裁打倒」などと書かれた巨大なスローガンが、人口3200万の都市・重慶のビル壁面に投影される様子が、Xで拡散した。
別の映像では、プロジェクターが設置されていたホテルの部屋に警察官が突入する様子が映っていた。映像は8月29日付とされ、編集された形跡はなかった。
米紙ニューヨークタイムズは、抗議を行ったと名乗る重慶出身のチー・ホン氏(43)へのインタビューを掲載した。チー氏は同紙に対し、8月上旬にプロジェクターを設置し、その後妻子とともに中国を離れ、月半ばまでに英国に移ったと語った。プロジェクターや、警察官が突入する様子を撮影したホテル室内の監視カメラは、英国から遠隔操作したという。スローガンは警察が発見するまでの50分間投影されていたと説明した。
ロイターは、中国外務省にコメントを求めたが返答は直ちに得られなかった。重慶市公安局には連絡がつかず、チー氏本人には接触できなかった。
中国で、共産党政権への公然たる抗議は極めてまれである。その背景には、全国的な監視網やネット検閲、さらに長年にわたる言論の自由や草の根活動への弾圧がある。
ロイターは映像の撮影場所を確認できたが、撮影日については独自に裏付けることができなかった。