プーチン大統領、中国訪問後にロシア極東へ:東方経済フォーラムで「グローバルサウス」連携強化を訴え

中国訪問を終えたロシアのプーチン大統領は4日、同国極東のウラジオストクに到着しました。大統領は5日に開幕する東方経済フォーラムの全体会合で演説を行う予定です。この訪問は、ウクライナ侵攻が続く中で、「グローバルサウス」と呼ばれる中立的な新興・途上国との協力を強化し、対ロシア包囲網に風穴を開けたいというクレムリンの強い意図を反映しています。

「グローバルサウス」連携と対ロ包囲網の突破

プーチン大統領は、東方経済フォーラムを国際的な発信の場と位置づけ、世界的な多極化が進む中、非西側諸国との関係構築を加速させる戦略を描いています。演説では、これらの国々との経済・政治的連携の重要性を訴え、西側諸国による対ロ制裁に対抗するための新たな枠組みを模索する姿勢を明確にするものと見られます。特に、エネルギー、インフラ、貿易分野での具体的な協力強化が焦点となるでしょう。

プーチン大統領が北京で演説する様子。中国訪問後にロシア極東で開催される東方経済フォーラムでの重要性を強調。プーチン大統領が北京で演説する様子。中国訪問後にロシア極東で開催される東方経済フォーラムでの重要性を強調。

米国とのエネルギー協力再開の可能性

注目されるのは、プーチン大統領が米国との間でのエネルギー協力再開に言及する可能性です。大統領は8月15日にロシア極東とベーリング海峡で隔てられた米アラスカ州を訪問し、トランプ大統領と会談していました。この会談を踏まえ、フォーラムの全体会合では、極東・北極圏を舞台とした資源開発やエネルギー供給網に関する協力の可能性に触れることも考えられます。これは、地政学的な緊張が高まる中で、特定の分野での対話の窓を開こうとするロシアの動きとして捉えられます。

東方経済フォーラムの軌跡と変遷

東方経済フォーラムは、2014年のウクライナ南部クリミア半島併合を受け、西側諸国が対ロ制裁を科したことをきっかけに、プーチン政権がアジア重視の「東方シフト」の象徴として2015年に開始したものです。今年で記念すべき10回目を迎えます。過去には、2016年から2019年まで日本の安倍晋三首相(当時)が4年連続で出席し、日ロ間の経済協力や北方領土問題を含む幅広いテーマが議論される重要な場となっていました。しかし、2022年のウクライナ侵攻開始以降、国際情勢は一変し、フォーラムの様相も大きく変化しています。

国際情勢の変化と参加国の顔ぶれ

近年、全体会合に出席する「外国賓客」は、中国をはじめとするアジアの友好国に限られる傾向にあります。今回は、ラオスとモンゴルの首相、そして中国の李鴻忠・全国人民代表大会(全人代)常務副委員長が参加していますが、首脳級の参加は限定的です。これは、主要な「グローバルサウス」諸国の首脳らが、先に天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議や北京での「抗日戦争勝利80年」の記念行事など、他の重要な国際会議やイベントを優先させたことも影響していると見られます。

結論

今回のプーチン大統領のロシア極東訪問と東方経済フォーラムへの参加は、ウクライナ侵攻後の厳しい国際環境下におけるロシアの外交戦略を象徴するものです。特に「グローバルサウス」との連携強化を訴えることで、国際社会における孤立を避け、新たな経済的・政治的パートナーシップを構築しようとするロシアの強い意志が示されています。また、米国との間での限定的な協力の可能性に言及するかに注目が集まり、国際情勢の複雑な変化を浮き彫りにしています。

参考文献