北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が9月3日、北京で開催された戦勝節記念行事に、これまでの人民服ではなく黒のスーツ姿で出席し、国際社会の注目を集めました。この服装の選択は、西側諸国の首脳と歩調を合わせることで、北朝鮮が「正常な国家の指導者」であるというイメージを強調する意図があったとみられています。
国際舞台での新たな装いと首脳外交
同日午前9時に始まった閲兵式では、金正恩総書記は中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領と並んで登場しました。天安門楼閣へ向かう間も和やかな談笑を交わし、習主席が中国の退役軍人らと握手する際には、金総書記とプーチン大統領も笑顔で応じ、順に握手する姿が映し出されました。金総書記は白シャツに黒いスーツ、そして淡いストライプのネクタイという洗練された装いでした。これは、2023年9月にロシアのボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領との会談に臨んだ際に初めて人民服を脱ぎ、スーツを着用した姿を想起させるものでした。
平壌出発から北京到着までの変化と意図
今回の訪中行程において、金正恩総書記は9月1日に平壌を出発する時点では黒の人民服を着用していました。しかし、翌2日に北京駅に到着した際には、既に黒のスーツに赤いネクタイという装いに改めていました。この明確な服装の変化は、習主席やプーチン大統領といった国際的なリーダーたちと並ぶ公式の場で、意識的に統一感を演出し、自らの国際的な立ち位置を再定義しようとする強いメッセージが込められていると分析されています。
北朝鮮最高指導者の服装に見る歴史的変遷
北朝鮮の最高指導者の公式衣装としては、長らく人民服が定番とされてきました。故金日成(キム・イルソン)主席や故金正日(キム・ジョンイル)総書記も、国内外の主要行事や南北首脳会談などで一貫して人民服を着用していました。中国では「中山服」とも称され、社会主義国家指導者の象徴的な衣装として広く認識されてきた歴史があります。金正恩総書記自身も政権初期には人民服姿が多かったものの、2016年の第7回朝鮮労働党大会で初めてスーツを着用し対外活動に臨みました。しかし、2018年の南北・米朝首脳会談や2019年の中朝首脳会談では再び人民服に戻すなど、その服装は外交戦略や国際情勢の変化に応じて意図的に使い分けられてきました。
金正恩総書記がスーツ姿で習近平国家主席、プーチン大統領と並び立つ北京の戦勝節記念行事
変化する北朝鮮の国際イメージ戦略
金正恩総書記が国際舞台でスーツ姿を選択したことは、北朝鮮が外交姿勢や国際的なイメージ戦略を柔軟に調整している表れと捉えられます。これは、単なるファッションの選択に留まらず、北朝鮮が国際社会との関わり方を模索し、より「普通の国家」としての認知を得ようとする試みの一環である可能性を示唆しています。今後の国際的な動向や北朝鮮の対外関係において、このようなイメージ戦略がどのような影響をもたらすか注目されます。
情報源:
- KOREA WAVE/AFPBB News (https://news.yahoo.co.jp/articles/a0d08fac30993f7fce67551513f0b6e45d1763ba)