国民の善意に支えられている献血事業において、前代未聞の不祥事が日本赤十字社(日赤)で相次ぎ発覚しています。今年に入り、日赤は献血によって製造された血液製剤「新鮮凍結血漿(FFP)」を人的ミスにより二度も無駄にしてしまいました。さらに、これらの重大な問題について自ら公表を遅らせたり、詳細を明らかにしないといった「ごまかし対応」を繰り返しており、その危機管理体制と情報公開のあり方が厳しく問われています。昨年4月からは愛子さまも日赤職員として勤務されており、世間の注目も集まっています。
日本赤十字社で勤務される愛子さまの様子
1万人分の善意が無駄に:血液製剤FFPの大量廃棄
献血は、輸血を必要とする患者の命を救うため、血液を無償で提供する尊いボランティア活動です。国内で唯一、採血事業者として国から許可を受けている日赤がこの事業を担っており、各都道府県の赤十字血液センターが採血業務を行っています。しかし、わずか3カ月の間に、この重要な事業を揺るがす二度の「ありえない問題」が発生しました。
最初の問題が発覚したのは、血液製剤である「新鮮凍結血漿(FFP)」を保管する赤十字血液センター辰巳供給出張所(江東区)での出来事です。FFPは献血で集められた血液から製造され、血液凝固に必要な「凝固因子」が不足した際に使用される重要な製剤です。5月11日の夜、FFPを保管する冷凍庫の電源が何らかの理由で落ち、保管基準温度であるマイナス20度以下を上回る状態が2時間半にわたって継続しました。原因は、業者の工事ミスとされています。この結果、120ミリリットル容量の1691本、240ミリリットルの1万1796本、そして480ミリリットルの261本ものFFPが使用不能となり、廃棄せざるを得ない事態となりました。単純計算は難しいものの、これは「1万人程度の善意が無駄にされた可能性がある」と指摘されています。
国民への情報公開の遅れと批判
これほど大量の血液製剤が使用不能になるという異例の事態にもかかわらず、日赤のその後の対応は国民の不信感を招くものでした。日赤は国への報告を遅らせた上、自らこの不祥事を公表しませんでした。世間にこの事実が知れ渡ったのは、発生から2カ月後の7月に読売新聞が報じたことがきっかけです。厚生労働省への報告も、問題発生から約1カ月後であり、しかもマスコミからの問い合わせを受けて慌てて報告したという、お粗末な経緯が明らかになりました。
このずさんな対応に対し、厚生労働省側も強い不満を示し、福岡厚労大臣は閣議後の記者会見で「献血由来の血液製剤であり、日本赤十字社にはしっかりと再発防止策を講じることや速やかに報告することを強く要請した」と言及する事態に発展しました。謝罪に追われた日赤側は「再発防止を徹底する」とのコメントを発表しました。
短期間での「あり得ないミス」の再発
日赤が再発防止を誓ったにもかかわらず、それから1カ月もたたないうちに、再び「あり得ないミス」が発生しました。これは、日赤の危機管理意識の低さ、そして尊い献血事業に対する責任感の欠如を露呈するものであり、国民の献血に対する信頼を大きく損なう可能性があります。献血は、多くの患者の命を救うために不可欠な活動であり、その根幹を支える日赤には、より一層の透明性と責任ある行動が求められています。