中国、「抗日戦争勝利80年」で結束を強調:軍事パレードと揺れる国民感情

中国政府は今年を「抗日戦争勝利80年」と位置付け、国内外にその存在感を強く示しています。大規模な軍事パレードを通じて愛国心を高揚させ、経済減速や社会的不満が募る国内情勢の中で、国民の結束を促す狙いがあるとみられます。しかし、この歴史認識と愛国主義の強調は、日中関係の悪化を懸念する声も生み出しています。

中国「抗日戦争勝利80年」軍事パレード、愛国心高揚と対米牽制

中国、抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードで新型兵器を披露中国、抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードで新型兵器を披露

9月3日、日本との戦争勝利から80年を記念する盛大な軍事パレードが北京で開催されました。習近平国家主席は演説で、「中華民族は強暴に屈せず自立自強する偉大なる民族だ。民族復興の偉業を推進するため、団結して奮闘しなければならない」と力強く訴え、国民の愛国心と団結を強調しました。北京市内では天安門広場周辺にとどまらず広範囲で交通規制が敷かれ、普段の渋滞が嘘のような異様な光景が広がりました。

規制をかいくぐり、沿道にはパレードを一目見ようと多くの市民がスマートフォンを手に詰めかけました。パレード終盤に現れた軍用機が轟音とともにビル群の隙間から姿を現すと、群衆からは大きな歓声が上がりました。3歳と5歳の子どもを連れてきた女性は「誇りに思う」と高揚感を隠せず、子どもたちにとっての「愛国教育」になると語り、日本との戦争を「国家と世界の記憶」として後世に伝えるべきだと述べました。同時に、「反日というムードではないが、先人たちの歴史は記憶しなければならない」と複雑な心情もにじませました。一方、友人たちとパレードを見ていた少女は「戦闘機を見て国家がとても強いと感じた。日本は中国を侵略したから、日本を憎んでいる」と率直な感情を吐露しました。

中国政府が「戦勝国」としての立場を鮮明にする背景には、経済成長の減速や国民の不満の高まりがあります。共産党が日本との戦争で勝利を導いたと印象付けることで、政権の統治の正当性を強調し、国民の結束を図る狙いがあると考えられます。また、軍事パレードでは核兵器搭載可能なICBM(大陸間弾道ミサイル)といった新型兵器も披露され、アメリカに対抗しうる軍事力の向上を誇示する場ともなりました。

国民感情の多様性と日中関係への影響

北京市民、天安門広場周辺で中国の軍事パレードを見守る北京市民、天安門広場周辺で中国の軍事パレードを見守る

今回の「抗日戦争勝利80年」の強調は、中国国内の多様な国民感情を浮き彫りにしました。歴史を記憶し誇りを感じる一方で、特定の対象への憎悪を抱く若者もいるという現実です。中国では関連映画の公開も相次いでおり、これらの動きは国内の愛国心を一層高める一方で、日中双方で関係悪化への懸念の声も上がっています。歴史問題が政治的に利用されることで、両国間の相互理解がさらに遠のく可能性も指摘されています。

結論

中国政府が「抗日戦争勝利80年」を大々的に記念する背景には、国内の結束強化と国際社会における存在感の誇示という複合的な戦略があります。軍事パレードや指導者の演説を通じて愛国心を高揚させ、共産党の統治の正当性を再確認する狙いは明らかです。しかし、国民の歴史認識や日本への感情は一様ではなく、こうした動きが今後の日中関係にどのような影響を及ぼすか、国際社会の注視が続きます。

参考文献

  • Yahoo!ニュース. (2025年9月5日). 中国、抗日戦争勝利80年を強調 軍事パレードで愛国心高揚も国民感情は複雑. (参照元記事)
    • 注: 上記の参照元記事リンクは架空のものであり、実際の記事は本文中に記載されたURLを参照しています。