石破首相、党内「反乱分子」に解散風で対抗か? 臨時総裁選求める声高まる中で

大荒れとなった両院議員総会を乗り越えた石破茂首相(68)だが、与党自民党内では依然として緊張が走っている。9月8日には、党内で高まる早期の総裁選前倒し実施の是非を確認する手続きが控えており、政務三役からも公然と臨時総裁選を求める声が上がる異例の事態となっている。こうした状況に対し、首相は解散風を吹かせ、党内の「反乱分子」を抑え込もうと躍起になっていると伝えられる。現在の自民党政権が直面する危機と、石破首相の今後の動向に注目が集まっている。

党内から早期総裁選を求められる石破茂首相党内から早期総裁選を求められる石破茂首相

両院議員総会の混乱と石破首相への厳しい視線

9月2日午後1時半、東京・永田町の自民党本部で開かれた両院議員総会は、約2時間半に及ぶ長丁場となった。この総会では、8月29日に参院選総括委員会が取りまとめた「素案」が議題とされた。素案は、先の参院選大敗の主要因として「政治とカネ」の問題などを厳しく指摘したものの、石破茂首相個人の責任については明確に言及していなかった。この点が多くの出席者の反発を招き、総会は大荒れの展開となったのである。

政治部デスクによると、総会には200名以上の議員が出席し、30名以上が発言。そのうち約20名が石破首相に対し、厳しい言葉を投げかけたという。首相は冒頭で「いかなるお叱りも受ける」と述べたものの、終始その場しのぎの態度に終始したとされ、党内の不満を解消するに至らなかった。一方、その去就が注目されていた森山裕幹事長(80)は辞意を表明。その場で首相に進退が一任されたが、これは石破政権にとって大きな痛手となった。他の党四役も辞任の意向を示しており、「石破おろし」は山場を迎えている状況だ。

早期総裁選前倒しの動きと党内情勢

9月8日には、自民党総裁選前倒し実施の是非が最終的に決まる。この日、前倒しを求める議員は午前10時から午後3時までの間に署名・押印した書面を党本部に提出することになっている。自民党所属の国会議員295人と都道府県連代表47人の合計342人のうち、過半数となる172人が要求すれば、総裁任期満了を待たずに臨時総裁選の実施が決定される運びだ。

前出の政治部デスクは、「首相や森山幹事長ら執行部が狙った署名公表による“萎縮効果”は限定的」と分析している。すでに、国会議員の間では120名以上が前倒しに賛同する意向を固めており、都道府県連も過半数が前倒しを求めるとの見方が有力だ。地方組織の動きが、これまで態度を決めかねていた議員たちの意思決定に大きな影響を与えるのは確実とみられており、党内情勢は流動的かつ緊迫感を増している。

政務三役からの批判と首相の「高揚感」

石破政権を支えるべき立場にある政務三役(副大臣・政務官)の間でも、早期総裁選を求める声が広がり始めている。副大臣・政務官47名のうち、約20名が賛同に回る意向を固めたと、政治部デスクは明かしている。旧岸田派に属する神田潤一法務大臣政務官(54)も、その一人として名を連ねている。

神田氏の言葉によれば、「大臣政務官という立場上、政府の任命権者に反して署名するのかという批判は当然ある」としながらも、「今の自民党に対して、かなり厳しい民意が示されたのは事実」と強調。さらに、「総理が辞任しないということに関して、納得できる説明が必要だが、そうしたものは党員全体に語られていない」と、石破首相のリーダーシップに対する疑問を呈している。

しかし、政権幹部からは「石破政権は持たない」といった諦めの声も漏れる中、石破首相本人は辞める気配を全く見せていない。政治ジャーナリストの青山和弘氏は、最近の石破首相の口ぶりからは「高揚感すら感じられる」と指摘する。先月29日に行われたインドのモディ首相との首脳会談も成功裡に終わり、自信を深めているという。また、各社の世論調査が上向いていることに気を良くしており、この週末も「あとは日経(の調査が上向くか)だなあ」と、さらなる支持率上昇に期待感を表していたとされる。

自民党内の「反乱分子」と、それに対抗しようとする石破首相の「解散風」。日本の政治は今、大きな転換点を迎えようとしているのかもしれない。9月8日の臨時総裁選の是非を問う手続きが、今後の政局を大きく左右する重要な一日となるだろう。

参考文献