全米を揺るがし続ける「エプスタイン事件」は、新たな局面を迎えています。2025年9月3日(現地時間)、ジェフリー・エプスタイン元被告(享年66)の被害者たちが米ワシントンD.C.の国会議事堂前に集結し、エプスタイン元被告が関与したとされる児童売春の「顧客リスト」を独自に作成する準備を進めていると宣言しました。現在、アメリカ国内では事件資料の全面開示を求める声がかつてないほど高まっています。
「エプスタイン事件」とは、米国の富豪ジェフリー・エプスタイン元被告が1990年代から2019年にかけて、未成年の少女を含む女性を対象とした人身売買や性的虐待を行っていたとされる一連の犯罪を指します。元被告は自身の豪邸やカリブ海に所有するプライベートアイランド(リトル・セント・ジェームズ島)に少女たちを誘い入れ、政界、財界、芸能界など各界の著名人、いわゆるセレブリティたちに売春を斡旋していた疑いが持たれています。大手紙国際部記者はこの事件の背景について次のように語ります。
「エプスタインが築いた売春ネットワークには、アメリカの多くの著名人が関与していたという憶測が世間に広まっています。その中の一人として、ドナルド・トランプ元大統領(79)の名前が挙がっていました。トランプ元大統領はかつてエプスタイン元被告と交流がありましたが、刑事告訴される前から関係を断ち切ったと説明しており、一貫して『リトル・セント・ジェームズ島には行ったことがない』と関与を否定しています。しかし、米連邦議会では、世間の疑問に答えるべく、事件の透明性向上を求める声が高まりつつあります。」
そのような状況下、9月2日に米下院監視委員会は新たに3万3295件もの事件資料を公開しました。その中には、エプスタイン元被告の邸宅内部を撮影したビデオも含まれており、売春の現場とされた悪名高い「悪魔の館」の全貌が初めて公にされることとなりました。
公開された「悪魔の館」の全貌
エプスタイン元被告がこの邸宅を購入したのは1990年で、当時の価格で250万ドル(現在の約3億6000万円)でした。約1321平方メートルもの広大な敷地には、6つのベッドルームと7つのバスルームが備え付けられていました。この「館の異質さ」を如実に物語っていたのは、邸宅のいたるところに配置された芸術品です。
若き日のアンドルー王子とエプスタイン事件の被害者ジュフリー氏。ロイヤルファミリー関与の疑惑が浮上する児童売春事件の象徴的な一枚。
前出の記者は、「壁には官能的な芸術品がびっしりと貼られており、バスルームや廊下、備え付けのジムなど、あらゆるところに額装された服を脱ぐ女性の写真が飾られていたと報じられています」と明かします。さらに奇妙な点は、館の一室が、ドリルや鏡などが完備された小さな歯科医院のように改造されていたことです。エプスタイン元被告がこの部屋をどのように利用していたのかは不明ですが、「定期的に少女たちの口腔内を洗浄していたのではないか」との見方も一部で浮上しています。
監獄内の監視カメラ映像と深まる死の謎
公開された資料には、エプスタイン元被告が独居房内で死亡した2019年8月10日、およびその前日の刑務所内の監視カメラ映像も含まれていました。ニューヨーク州の検視官は元被告の死因を自殺と断定していますが、その死には不明瞭な点が多く、一部では他殺の可能性も疑問視されていました。
この監視カメラ映像は、もともと同年7月に一部が抜け落ちた状態で公開されていましたが、今回は元被告が死亡した時刻の前後の映像すべてが公開された形となります。しかし、監視カメラが捉えていたのはあくまで共用エリアのみであり、元被告の独居房のドアや室内を映したものではありませんでした。
前出の記者は、「次々と捜査資料が公になっていますが、事件の核心である『顧客リスト』を含め、決定的な証拠はいまだ明らかにされていません。9月3日に国会議事堂前で行われた被害者たちの『宣言』によって、捜査がさらなる進展を迎えることが期待されています」と述べました。エプスタイン事件のすべての真相が明らかになる日は、そう遠くないのかもしれません。
参考文献
- Yahoo!ニュース: エプスタイン事件に関する報道(参照元記事)
- 米下院監視委員会公開資料
- 時事通信フォト