HMSプリンス・オブ・ウェールズ横須賀寄港:ハイマスト作戦と「洋上の基地」体験

先月12日、イギリス海軍最大の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が日本の横須賀に寄港しました。この寄港は、中国やロシアを念頭に置いたインド太平洋地域の安全保障強化を目的とする「ハイマスト作戦」の一環として実施され、日英両国の防衛協力における重要な節目となります。英国の空母打撃群が日本を訪れるのは、2021年の「クイーン・エリザベス」以来4年ぶり、2度目のことです。前回の寄港では、コロナ禍の影響で一般公開や艦内ツアーが大幅に制限されましたが、今回はメディア向けツアーと一般公開が実施され、その内部が詳細に公開されました。

イギリス海軍の最新鋭空母HMSプリンス・オブ・ウェールズが横須賀に寄港し、その巨大な姿を披露。インド太平洋地域における日英協力の象徴。イギリス海軍の最新鋭空母HMSプリンス・オブ・ウェールズが横須賀に寄港し、その巨大な姿を披露。インド太平洋地域における日英協力の象徴。

英国空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の日本寄港とその意義

HMSプリンス・オブ・ウェールズの横須賀寄港は、インド太平洋地域における英国の関与を具体的に示すものです。この地域での安全保障環境が変化する中、同盟国との連携強化は不可欠とされており、「ハイマスト作戦」はその明確な意思表示と言えるでしょう。2021年の「クイーン・エリザベス」の寄港と比較し、今回はより開かれた形で日本国民との交流の機会が設けられました。これは、日英間の防衛協力の深化だけでなく、地域の安定に対する共通のコミットメントを強調するものです。この最新鋭空母の存在は、抑止力の向上にも寄与すると期待されています。

メディアツアーで垣間見た「洋上の基地」:厳重な警備と艦内の日常

一般公開に先立つ28日には、メディア向けツアーが実施されました。乗艦は1社につき1名に限定され、持ち込める機材はカメラやスマートフォン、記録メディアに至るまで全て事前登録が必要という厳重な体制でした。乗艦前には手荷物検査も行われ、安全確保への徹底した配慮がうかがえました。米軍横須賀基地から東京国際クルーズターミナルへの移動中、「プリンス・オブ・ウェールズ」に乗艦した記者は、まさに「洋上の基地」と呼ぶにふさわしいその内部を体験しました。

厳重な手荷物検査を通過後、最初に案内されたのは士官室(ワードルーム)です。室内にはチャールズ国王の肖像画が飾られ、ネイビーブルーのソファには「プリンス・オブ・ウェールズ」の羽根をモチーフにしたクッションが整然と並べられていました。士官室では、「ハイマスト作戦」の概要や今回の日本寄港の意義について、詳細な説明が行われました。その後、報道陣は艦内の別の部屋へ案内されました。

艦内は「機械音が大きく、声が聞こえにくいのではないか」という懸念がありましたが、実際は予想以上に静かで、時折流れるアナウンスには臨場感がありました。通路にはゴムの匂いと、地下鉄にも似た油と湿気が混じった独特の匂いが充満していました。すれ違う隊員からは香水の匂いが漂うこともあり、多様な文化が交錯する空間を感じさせます。艦内の通路にはそれぞれ目印となる名前が付けられていましたが、急勾配な階段を息を切らしながら登るうちに、数名がはぐれる場面もあり、その広大さと複雑な構造を実感させられました。

まとめ

イギリス海軍空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の横須賀寄港は、「ハイマスト作戦」の下、インド太平洋地域の安全保障強化と日英防衛協力の深化を象徴する重要な出来事でした。厳重な警備を伴うメディアツアーを通じて、その巨大な「洋上の基地」の内部は、静かで秩序だった空間と、独特な雰囲気を持つ日常が垣間見えました。今回の寄港は、国際的な安全保障環境における日本の役割と、同盟国との連携の重要性を改めて浮き彫りにするものです。

参考文献