日本は現在、軍用ドローン(無人機)の調達先として、米国や欧州ではなくトルコまたはイスラエルを検討しており、これはアジアにおける無人機取得の近年の動向を反映したものと言えます。この動きは、日本の国防戦略において新たな段階を示唆しており、中東製の先進的な無人機技術への関心が高まっていることを裏付けています。防衛省は、イスラエル製「ヘロンMK II」の試験を既に終え、トルコ製の「バイラクタルTB2」の試験を進めていることを国際軍事情報サイト「ジェーンズ」が報じました。
イスラエル製「ヘロンMK II」の評価と過去の事例
日本がまず試験を終えたのは、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)製の高性能ドローン「ヘロンMK II」です。エルサレム・ポスト紙は、これが「記録にある限り、イスラエルの兵器システムが日本で試験された最初の事例」であり、「日本はこれまでイスラエル製装備の購入を控えてきた」と指摘しており、日本の国防調達における大きな転換点と見られています。ヘロンシリーズは主に監視・偵察用途で知られていますが、日本が試験した機体は電子戦用の構成であった可能性も報じられています。
マルタ空軍が運用するイスラエル製無人機「ヘロン」
しかし、ヘロンシリーズの運用には課題も存在します。2010年代に韓国に売却された3機のヘロンは、全てが事故で失われています。最も直近では、2025年3月17日にMK IIの旧モデルである「ヘロンI」が着陸時に駐機中のヘリコプターと衝突し、両機が全損する事故が発生しました。幸い、この事故による死傷者は確認されていません。
トルコ製「バイラクタルTB2」と艦載型TB3への関心
一方で日本が評価を進めているトルコのバイカル製ドローン「バイラクタルTB2」は、主に空対地弾薬を搭載した攻撃用無人機として、その実績を国際的に積み上げています。このTB2の試験は、日本の国防関係者の間で注目を集めています。
特に興味深いのは、バイカル社のハルク・バイラクタル最高経営責任者(CEO)が2022年3月に、TB2の艦載型で主翼を折りたためる「TB3」について、「日本のいずも型護衛艦に非常に適している」と発言していたことです。TB3はトルコが強襲揚陸艦「アナドル」での運用を念頭に開発を進めており、陸上運用が主流のTB2が日本で試験される中、TB3は2023年9月にも「アナドル」での運用が開始される予定です。日本の海上防衛における将来的な無人機運用の可能性も示唆される動きと言えるでしょう。
結論
日本の軍用ドローン調達に関する今回の検討は、国際的な防衛協力の多様化と、日本の安全保障政策における新たな柔軟性を示すものです。イスラエルとトルコ製のドローンは、それぞれが持つ特性と実績から、日本の防衛能力を補完する可能性を秘めています。今後の選定結果は、日本の国防技術の方向性だけでなく、中東諸国との外交関係にも影響を与える重要な決定となるでしょう。
参考文献
- Yahoo!ニュース (記事元)
- 国際軍事情報サイト「ジェーンズ」
- イスラエル紙「エルサレム・ポスト」