パリジェンヌの意外な秘密:食後のデザートが「痩せる体」を作る?血糖値コントロールと賢い食習慣

「最高の自分」を目指すパリジェンヌたちの生き方は、多くの女性にとって憧れの的です。しかし、その美しさと自信の裏には、意外な「神習慣」が隠されているのをご存知でしょうか。長年ルイ・ヴィトンのパリ本社でPRトップを務め、「もっともパリジェンヌな日本人」と称された藤原淳氏の著書『パリジェンヌはダイエットがお嫌い』から、日本人が抱く「ダイエット」の常識を覆す、パリジェンヌ流の食習慣、特に「食後のデザート」の重要性について掘り下げます。

かつて「痩せれば全てが解決する」と信じ、ダイエットに心身を費やしてきた藤原氏。しかし、パリジェンヌたちとの出会いを通じて、その考えが根本的に間違っていたことに気づきます。本記事では、パリジェンヌたちがどのように自身と向き合い、心身のバランスを整えながら、健康的で魅力的な美しさを保っているのか、その秘訣を具体的な食習慣、特に「デザートの食べ方」に焦点を当ててご紹介します。

フランスに「お土産文化」が存在しない理由

著者がルイ・ヴィトンでPRマネージャーとして世界中を飛び回っていた頃、多忙な日々の中で自身の体調管理は後回しでした。そんな中、出張先からチームメンバーのためによくお土産のスイーツを持ち帰っていたといいます。日本のビジネス文化では当たり前とされるこの「お土産習慣」ですが、フランス、特にパリのオフィスでは全く見られない光景でした。

オフィスで菓子折りを見かけることは皆無で、著者がお菓子を持っていくと喜ばれるものの、他にお土産を配る人も、自分用にお菓子を持ち込む人もいません。手作りスイーツを持ってくる女性も皆無で、誕生日や季節のイベントといった特別な機会を除けば、皆で甘いものを分け合う習慣がないのです。パリジェンヌにとって、息抜きはコーヒーかお茶だけ、というのが常識のようでした。この日本との文化的な違いに、著者は当初、大きな戸惑いを感じていました。

パリジェンヌが午後の間食をしない「シンプルな真実」

フランスの夕食は遅く、20時を過ぎてからが一般的です。PR職は残業が少ないものの、朝がゆっくりなため退社時間は19時頃。オフィスで過ごす午後の時間は意外に長く、ダイエット中だった著者は、午後3時を過ぎると無性に甘いものが食べたくなり、我慢できずに自動販売機のブラウニーやクッキーといった市販のお菓子に手を出していました。

なぜ周りのパリジェンヌは間食をしないのか。その疑問は、著者がランチに出かける機会が増えてからようやく氷解します。答えは至って単純明快でした。それは、パリジェンヌがランチの際、「必ずデザートまでしっかり食べているから」です。

パリのカフェでコーヒーと焼き菓子を優雅に楽しむパリジェンヌ。食後のデザート習慣が健康的な美しさの秘訣であることを示唆する光景。パリのカフェでコーヒーと焼き菓子を優雅に楽しむパリジェンヌ。食後のデザート習慣が健康的な美しさの秘訣であることを示唆する光景。

デザートは、フォンダン・オ・ショコラやタルトのような焼き菓子のこともあれば、アイスクリームやフルーツ・サラダのようなシンプルなものもあります。「カフェ・グルマン」という、エスプレッソに一口サイズのスイーツが数種類付いてくる定番メニューまで存在します。同僚たちは「甘いもので締めないと食べた気がしない」と口を揃え、デザートを抜くことはありませんでした。「太りたくないから」という理由でデザートをパスしていたのは、著者だけだったのです。

著者が驚いたのは、パリジェンヌにとってスイーツが「午後のお楽しみ」ではなく、「食事の一部」という位置付けにあったことです。フランスにはアフタヌーンティーの習慣がなく、デザートは学校の給食や家庭でも、昼食と夕食に必ず出されます。市販のヨーグルトやムース、フルーツのコンポートなど質素なことも多いですが、甘いものは食事に欠かせない重要な要素なのです。

つまり、パリジェンヌは幼少の頃から、スイーツを食後に「デザートとして摂る」ことが習慣化されています。その理由の一つは、単純に身体が「糖分を欲する」から。フランス料理には和食のように砂糖が含まれていないため、食後に自然と甘いものが欲しくなるのです。

血糖値コントロールに最適?「食後のデザート」の科学的根拠

「食後にデザートをしっかり食べる」というパリジェンヌの習慣は、単なる文化的な違いだけでなく、科学的にも理にかなっていることが判明しています。この連載でも紹介されたジェシー・インチャウスペ氏の著書『Glucose Revolution』(日本語訳タイトル『人生が変わる 血糖値コントロール大全』かんき出版刊)が、その有効性を明確に弁証しています。

この本の要旨は、血糖値の変動幅が小さいほど健康に繋がり、血糖値が急上昇すると脳がインスリンを過剰に分泌させ、結果として脂肪を蓄積しやすく、太りやすい体質になるというものです。インスタグラムで560万人ものフォロワーを抱えるインチャウスペ氏が推奨する食べ方の一つに、「甘いものはおやつとしてではなく、食後に摂取せよ」という教えがあります。

これは、「空腹時に糖分を摂取するよりも、食後に摂取する方が、血糖値の変動幅をより小さく抑えられる」という理論に基づいています。この事実は著者が最近になって知ったことですが、思い返せばこれこそが長年パリジェンヌが実践してきた食習慣そのものでした。つまり、この世界的ベストセラーが欧米諸国で話題になるずっと前から、パリジェンヌたちは無意識のうちに、身体に良く、太りにくい食べ方を実践していたということになります。

著者自身の変化と「パリジェンヌ習慣」への道のり

パリジェンヌの食習慣を取り入れ、ランチ時にデザートまでしっかり食べるようになってから、著者の食生活には顕著な変化が現れました。午後、無性に甘いものに手が伸びるようなことがなくなり、間食が自然と減っていったのです。それに伴い、日本的な「お土産の菓子折り」を持参することもなくなりました。

著者がパリジェンヌの食習慣を本格的に取り入れ始めたのはこの頃からですが、長年にわたる習慣を変える道のりはまだまだ続いているといいます。しかし、この一歩が、既存のダイエット観を根本から見直し、健康的で心豊かなライフスタイルを築くための重要な転換点となりました。

結論:パリジェンヌに学ぶ、健康的で心豊かな食生活

パリジェンヌたちの「食後のデザート習慣」は、単なる美食文化以上の意味を持っています。それは、自身の心身と向き合い、無理なく健康を維持し、そして何よりも食事を楽しむという、豊かでバランスの取れたライフスタイル哲学の表れです。日本の「間食を我慢する」ダイエット文化とは対照的に、食事の一部としてデザートを積極的に取り入れることで、血糖値の安定を促し、結果的に太りにくい体質へと導く科学的な裏付けも明らかになりました。

私たちも、このパリジェンヌの知恵に学び、食後のデザートを罪悪感なく楽しむことで、午後の甘いものへの誘惑から解放され、健康的で心豊かな毎日を送ることができるかもしれません。今日から、あなたも「食後のデザート」を新たな習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。


参考文献

  • 藤原 淳 著. 『パリジェンヌはダイエットがお嫌い』.
  • ジェシー・インチャウスペ 著, 大前 泰之 訳. 『人生が変わる 血糖値コントロール大全』. かんき出版.