新型コロナ新変異株「ニンバス」:感染者の実体験に見る症状と医療対応の現実

世界的に広がりを見せている新型コロナウイルスの新変異株「ニンバス」は、日本国内でもその感染が徐々に拡大しています。特に沖縄や九州地方で先行して流行し、関東地方でも9月中旬頃の流行が予測されていました。このニンバス株の感染については、「カミソリの刃を飲んだような喉の痛み」という特徴的な症状が報じられることが多く、多くの人の関心を集めています。しかし、実際に感染を経験した人々はどのような印象を抱いているのでしょうか。今回、ニンバスに感染した30代男性の体験談から、その実態と現在の医療現場での対応について深く掘り下げます。

軽い咳から始まった体調異変:簡易検査でコロナ陽性

宮城県仙台市に住む30代後半のAさんは、8月中旬に体調の異変を感じ始めました。8月19日の火曜日、会社で仕事中に軽い咳が出始めたのが最初の兆候でした。この時点では喉の痛みはなく、そのまま業務を継続していましたが、その日の夜になって突然、喉に痛みが現れたといいます。市販の風邪薬で症状を抑えようと試みたものの、熱は38.2度まで上昇し、翌日には病院を受診することになりました。

診察時、Aさんが発熱と喉の痛みを医師に伝えると、「最近のコロナに近い症状なので、検査してみましょう」と促されました。鼻の奥に綿棒を挿入するタイプの簡易検査の結果は陽性。医師からは「やはりコロナですね。最近流行っている型でしょう」と告げられました。病院を後にしたAさんは、朝のニュースで新型コロナの流行は知っていたものの、詳しい変異株の名称までは覚えていませんでした。しかし、その後に調べた結果、自身が感染したのが「ニンバス」と呼ばれる、喉の痛みが特徴とされる株であることを知りました。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う初期症状のイメージ。軽い咳から始まる病状を示唆。新型コロナウイルス感染拡大に伴う初期症状のイメージ。軽い咳から始まる病状を示唆。

「カミソリの刃」とは異なる喉の痛み、隔離と治療の現状

Aさんの体験では、ニュースで強調されるような「カミソリの刃」や「ガラス片」を飲み込んだかのような激しい痛みは感じられなかったといいます。彼が感じた喉の痛みは、例えるならカラオケで大声を出した後のような、あるいは一般的な風邪を引いた時のような「少しチクチクする痛み」でした。症状の程度には個人差が大きいことが伺えます。

医師からは、症状が出た19日以前の接触者について確認があり、同僚との昼食を伝えると、「強制ではありませんが、連絡がつくのであれば、コロナ陽性の診断を受けたことを伝えた方がいいかもしれないですね」とアドバイスがありました。また、現在の隔離措置についても説明がありました。「今日から5日間は隔離措置ですが、買い物などやむを得ない場合は外出していただいて大丈夫ですし、それを止める権利は我々にはありません」という言葉からは、以前と比べて自己判断に委ねられる部分が増えている現状が垣間見えます。

処方薬についても、積極的に勧められることはありませんでした。「コロナ専用の薬も出せますが、値段が高くなります」と説明され、以前は国費負担で無料で提供されていた時期もあったものの、現在は保険適用で3割負担となることが伝えられました。コロナ専用薬には、3割負担で約7万円するものと、約1万5000円の選択肢があったとのことです。Aさんは基礎疾患があるにもかかわらず、「お若いのでそんなに重症化することもないと思いますし、一旦は様子見で、普通の風邪のときに処方している熱止めのカロナールと咳止めの錠剤でいいのではないでしょうか」という医師の勧めに従い、通常の対症療法薬を選択しました。

「ニンバス」株の症状はメディアで報じられるほど激しいものとは限らず、個人差が大きいこと、そして現在の医療現場では、コロナ治療薬が高額であることから、患者の症状や経済状況を考慮した上で、通常の対症療法が推奨されるケースも少なくないことが明らかになりました。

まとめ

新型コロナウイルスの新変異株「ニンバス」は、その特徴的な喉の痛みが注目されていますが、実際の感染者の体験からは、その痛みの程度には個人差があり、必ずしも全ての人が「カミソリの刃を飲んだような」激痛を感じるわけではないことが分かりました。また、現在の日本におけるコロナ感染後の医療対応では、接触者への情報共有や隔離措置に関して柔軟な判断が求められ、高額な専用治療薬の選択についても、患者の症状や状況に応じた医師からの助言と、患者自身の判断が重要になっています。この体験談は、今後の感染対策や医療体制のあり方を考える上で貴重な情報を提供しています。

参考文献