2024年11月に三笠宮妃百合子さまが逝去されて以来、空席だった三笠宮家当主の座に、故・寛仁親王の長女である彬子女王殿下がつかれることが、9月30日の皇室経済会議で決定しました。これは、未婚の女性皇族が宮家の当主となる極めて異例の事態であり、皇室制度のあり方、特に女性皇族の将来に関する議論に新たな光を当てるものと注目されています。神道学者で皇室研究家の高森明勅氏は、この決定が、結婚後も女性皇族が皇籍を保持できる制度改正に向けた政府の責任をより重くする、と指摘しています。
2019年天皇即位式に臨む三笠宮彬子女王殿下。未婚女性皇族としての新たな役割
三笠宮家の新たな当主:彬子女王殿下の就任
今回の皇室経済会議では、三笠宮家の当主として彬子女王殿下が就任するだけでなく、寛仁親王妃信子殿下が新たに「三笠宮寛仁親王妃家」を創設することも併せて決定されました。これは、皇室における宮家の当主継承において、いくつかの点で前例のない出来事として人々の関心を集めています。
未婚の女性皇族が当主となる「異例」の背景
これまでの宮家当主の継承では、当主が薨去された後、その妃殿下が当主になられるのが一般的でした。例えば、秩父宮では勢津子妃が、高松宮では喜久子妃が、高円宮では久子妃殿下が、それぞれ当主を務めてこられました。この先例に照らせば、2012年に寛仁親王が薨去された後、信子妃殿下が「寛仁親王家」の次期当主となるのが自然な流れとされていました。しかし、信子妃殿下は長年にわたり家庭内の不和を抱え、宮邸を出ておられる事情がありました。結果として、妃殿下は当主とならず、寛仁親王家自体が三笠宮家に吸収される形になっていました。
今回の彬子女王殿下の当主就任が「異例」とされる最大の理由は、未婚の女性皇族が宮家の当主となったことにあります。このようなケースは、江戸時代に仁孝天皇の皇女・淑子内親王が1863年に長く当主不在だった「桂宮家」の当主になられて以来、実に162年ぶりの出来事となります(桂宮家は淑子内親王の代で廃絶)。また、独身皇族による宮家自体も稀であり、寛仁親王の弟である宜仁親王が1988年に独身のまま「桂宮家」を立てられて以来の事例です。
さらに、母親である信子妃殿下がご健在であるにもかかわらず、彬子女王殿下が当主になられた点も特筆すべきです。信子妃殿下が三笠宮家の当主にならず、別の「三笠宮寛仁親王妃家」を立てられたのは、それ以外の形でご家族間の合意形成が困難であったためと推測されます。一部からは「分家というよりも分裂に近い」との声も聞かれ、関係者間の複雑な状況を物語っています。彬子女王殿下は現在、主に京都を拠点に活動されており、新しい当主としての今後の動向が注目されます。
皇室経済会議の役割と当事者の意思決定プロセス
宮家の当主選定には「皇室経済会議」が関与します。この会議は、皇室経済法に基づき、衆参両院の正副議長、内閣総理大臣、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8名で構成されています。ただし、この会議が宮家の当主を指名して決定するわけではありません。皇室経済法第6条第2・3項には「皇室経済会議の議を経ることを要する」と明記されており、これは会議側に「発議権」がある規定とは区別されます。すなわち、あらかじめ定まっている事項に対し、会議が同意することで最終的に決定されることを意味し、その前提となるのは、あくまで当事者である皇族方の意思です。
今回の「分裂」とも表現されるような事態に陥った背景には、関係者の意思が、一つの宮家を維持するという結論にまとまらなかったという事情があったことを示唆しています。
皇室の将来を巡る議論と女性皇族の課題
今回の彬子女王殿下の異例の当主就任は、かねてより懸案事項となっている皇室制度の改正問題、特に女性皇族のあり方に深く関連しています。高森明勅氏が指摘するように、この決定に同意した首相や衆参正副議長は、「未婚の内親王・女王がご結婚後も皇籍を保持できる制度改正」に向けた責任を一層重くしたと言えるでしょう。
現在、愛子さま、佳子さま、彬子さまをはじめとする未婚の女性皇族方は、ご結婚とともに皇族の身分を離れることになります。これは、将来的な皇族数減少という課題を抱える中で、皇室の持続性に対する懸念を生じさせています。彬子女王殿下の当主就任は、女性皇族が皇室の中で重要な役割を担う可能性を示しつつも、現行制度の限界を浮き彫りにしています。
結論
三笠宮家の新たな当主として彬子女王殿下が就任されたことは、未婚の女性皇族が宮家の当主となるという162年ぶりの歴史的な出来事であり、皇室における当主継承のあり方に新たな一石を投じました。また、信子妃殿下が別の宮家を創設したことは、複雑な家庭内の事情が皇室の制度運用に影響を与えている現実を示しています。
この異例の展開は、皇室の将来、特に女性皇族の役割と地位に関する議論を一層深めるものと考えられます。首相や国会議員には、今回の決定を踏まえ、結婚後の女性皇族の皇籍保持に関する制度改正など、皇室が直面する課題解決に向けた具体的な議論を進めることが強く求められています。この出来事を機に、国民の間でも皇室の未来について広く関心が寄せられ、建設的な議論が深まることが期待されます。
参照元:
Yahoo!ニュース – 異例だらけ「未婚の女性皇族」が宮家の当主に…首相や衆参正副議長は、たなざらしの「制度改正」の責任が重くなった