コロナ禍以降、イギリスへ留学する日本人の数が再び増加傾向にあります。一般社団法人海外留学協議会(JAOS)が発表した日本人留学生数調査によると、2024年のイギリスへの留学者数は8232人で、渡航先として第4位にランクイン。前年からは約1300人の大幅な増加を記録しています。この調査では、特に3カ月未満の短期語学留学が人気を集めていることが明らかになっています。
筆者は8月下旬にロンドンで開催された留学業界の国際会議に参加しましたが、その中で頻繁に話題に上っていたのが、50歳以上を対象とした「大人留学」でした。意外にも、イギリスの留学関係者が強く推奨していたのは、活気ある大都市ロンドンではなく、豊かな歴史を持つ地方都市への渡航です。今回は、大人留学の最適な渡航先として注目される2つの街、チェルトナムとオックスフォードの中から、チェルトナムの魅力と体験を紹介します。歴史ある街並みに身を置き、自身の関心に沿った学びを深める――。そんな贅沢な時間を、50代の筆者自身が現地で体験してきました。
50代からの「学び直し」注目される大人留学の現状
近年、日本からのイギリス留学は多様化しており、特に「大人留学」が新たなトレンドとして注目されています。これは、キャリアアップ、リフレッシュ、または単に知的好奇心を満たす目的で、50歳以上の人々が海外での学びを選択する現象を指します。短期語学留学の人気も相まって、より手軽に、しかし深い学びを得られる機会が求められています。留学業界では、このような成熟した年代の学習者が、単なる語学力向上だけでなく、異文化体験や専門分野の知識深化を志向していることを認識しており、そのニーズに応えるプログラムが拡充されつつあります。留学先として、大都市の喧騒から離れた地方都市が推奨されるのは、落ち着いた環境で集中して学べること、地域に根ざした文化を深く体験できること、そして生活コストが比較的抑えられることなどが理由として挙げられます。
コッツウォルズの玄関口「チェルトナム」で過ごす優雅な時間
ロンドンでの仕事を終え、ヴィクトリア・コーチ・ステーションから長距離バスに乗り込み、約3時間の移動を経て、コッツウォルズ地方の端に位置するチェルトナムに到着しました。陽気な運転手による車内アナウンスや、車窓から流れるのどかな田園風景は、旅の気分を一層盛り上げてくれます。
イギリスの地方都市、大人留学におすすめのオックスフォード・クライストチャーチ大聖堂
チェルトナムは、コッツウォルズ地方の西部に位置する交通の要衝であり、バースと並んで有名な温泉保養地として知られています。その歴史は王室とも深く関連しており、18世紀にジョージ3世が家族を連れて訪れて以来、「チェルトナム・スパ」は王室御用達の温泉地として名を馳せるようになりました。筆者が到着した日曜日の午後は小雨が降っており、街中は心地よい静けさに包まれていました。朝食が美味しいと評判のB&Bにチェックインした後、早速街を散策。小ぢんまりとしていながらも、どこか洗練された上品な街並みが広がっています。大通りであるプロムナード沿いには、イギリスらしい華麗な建築物が並び、ローラ アシュレイなどの専門店、デパートや個性豊かなショップが軒を連ね、訪れる人々を魅了していました。このような環境は、落ち着いて英語を学びたい方や、イギリス文化に深く触れたいと願う大人留学者にとって、理想的な選択肢となるでしょう。
まとめ
イギリスへの「大人留学」は、年齢を重ねてから新たな学びや体験を求める人々にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。特に、チェルトナムのような地方都市は、歴史ある美しい街並みの中で落ち着いて学習に集中でき、イギリス文化を深く味わうことができるため、ロンドンとは異なる特別な価値を提供します。大人留学は、単なる語学力の向上に留まらず、人生を豊かにする経験や新たな視点を得る機会となるでしょう。
参考文献
- 一般社団法人海外留学協議会(JAOS). (2024). 日本人留学生数調査.
- Yahoo!ニュース. (2024年10月18日). イギリスで人気再燃「大人留学」 50代がロンドンではなく地方を選ぶワケ. https://news.yahoo.co.jp/articles/efdcd9c1a5656d8a855046b7206e78eaf27ef10e