大阪市阿倍野区で、今年11月に創業5周年を迎える人気のパン店「ブーランジェリーショー」。この記念すべき節目を前に、店長の髙田舞美さん（32）は感慨深い表情で語る。「本当に奇跡だと思います。多くの方々の支えがあったからこそ、私たちは今も前向きに進んでいられます。感謝しかありません」。家族の絆と地域社会の温かい支援が織りなす、困難を乗り越えたパン職人一家の物語は、多くの人々に感動を与えています。
家族で紡ぐ「ブーランジェリーショー」の味と心
「ブーランジェリーショー」は、職人が厳選した小麦を使い、粉をこね、焼き上げたパンをその場で販売する本物のブーランジェリーです。店舗の奥にある厨房では、舞美さんの妹である川端優里さん（30）が黙々とパン作りに励んでいます。全粒粉と濃厚な発酵バターが香るサクサクのクロワッサン、栄養価の高い希少な“古代小麦”を使用したこだわりのバゲットなど、大きな窯から次々と焼き上がるパンからは芳ばしい香りが立ち込め、店内は幸せな空気に満たされます。優里さんの手によって丁寧に作られる看板商品「幸せのアップルパイ」は、薄くのばした生地に自家製りんごのコンポートがたっぷりと包み込まれ、一日に何度も焼き上げられる店の顔です。
今年11月で創業5周年を迎えるパン店「ブーランジェリーショー」の店頭で記念撮影する髙田舞美さん、川端優里さん、川端正悟さん
店の運営は、長女の舞美さんが販売、営業、経理などを担当し、パンの製造は主に次女の優里さんが手掛けています。そして、この家族を支えるのが、40年以上のキャリアを誇る生粋のパン職人であり、姉妹の父であるオーナーの川端正悟さん（61）です。父のレシピとDNAを色濃く受け継いだ優里さんが生み出す絶品のパンを求め、連日多くのお客様がこの大阪のパン屋を訪れます。しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
開業直前の悲劇と奇跡の復活
家族が直面した最大の試練は、開業を目前に控えた時期に訪れました。当初、店を構える予定だったのは、現在の場所とは異なる阿倍野区内の別の場所。現在の店舗がオープンする半年も前に、そこで開業するはずでした。しかし、オープンのわずか4日前、隣店からのもらい火により、夢と希望が詰まった店はあっけなく全焼してしまったのです。燃え盛る炎と変わり果てた店舗を前に、父と娘たちは呆然と立ち尽くしました。この瞬間、長年の夢はついえたかに思えました。
ブーランジェリーショーで大人気の看板商品「幸せのアップルパイ」
しかし、家族は決して諦めませんでした。舞美さんが語ったように、絶望の淵にあった家族には、地域社会や友人知人から数えきれないほどの支援の手が差し伸べられました。見知らぬ人々からの励ましや物質的な援助が、彼らの心を強くし、再起への道を照らしました。この温かい善意が“奇跡”を起こし、家族は再び立ち上がる決意を固めることができました。
困難を乗り越え、地域に愛されるブーランジェリーへ
火災という予期せぬ困難を乗り越え、ブーランジェリーショーは新たな場所で開業を果たし、今年で5周年を迎えます。家族の絆、パンへの情熱、そして何よりも地域の人々の温かい支援が、このパン店を支え続けてきました。今では、その絶品のパンと家族の感動的な物語が、地元大阪だけでなく、遠方からも人々を引き寄せています。「幸せのアップルパイ」は単なる人気商品ではなく、家族が苦難を乗り越えて掴んだ幸福と、人々の優しさが結実した希望の象徴となっています。
結論：家族の絆と支援が育んだ、希望のパン物語
「ブーランジェリーショー」の5周年は、単なるお店の記念日以上の意味を持っています。それは、家族の強い絆、プロとしての揺るぎない専門性、そして地域社会からの信頼と支援が、いかに大きな困難をも乗り越える力となるかを示す証です。この物語は、まさに何層にも折り重なったアップルパイのように、苦難と幸福が intertwined になった、心温まる現代の「幸せのブーランジェリー」の物語として、これからも多くの人々に語り継がれていくでしょう。
