【シンガポール=森浩】インドで不法移民に国籍を付与する国籍法改正をめぐって抗議活動が拡大している。不法移民増加への懸念とともに、イスラム教徒に対して「差別的」ともとられる改正内容に反発が強まっているためで、治安部隊とデモ隊の衝突で死者が出る事態となっている。
改正法は11日の上院の可決を経て、成立した。パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンからインドに来た移民に対し、宗教的迫害が理由だった場合に国籍が付与される。ヒンズー教や仏教など6宗教の信者が対象となる一方、イスラム教徒は含まれていない。
法改正は、ヒンズー至上主義を掲げる国政与党インド人民党(BJP)が、他国を追われたヒンズー教徒救済を主眼に置いて推進したとされ、モディ首相は「1000%正しい」と自信をのぞかせる。
特に反発が強いのは、安倍晋三首相が訪問延期を決めた北東部だ。歴史的にバングラデシュからの不法移民が多く、法改正を受けてさらに増加するとの懸念が広がった。アッサム州グワハティでは治安部隊とデモ隊の衝突が起き、15日までに少なくとも6人が死亡した。
イスラム教徒を排除していることが、宗教的に中立な世俗国家であることを宣言した憲法に違反するとした批判も起きている。首都ニューデリーでは15日、イスラム教徒が多い南東部を中心に抗議デモが起き、大学で学生と治安部隊が衝突し、数十人が負傷した。