日本の住宅価格高騰:都心マンションVS郊外戸建て、最新トレンドと購入層の動向

「住宅価格の高騰が止まらない」。この言葉を今年何度耳にしたことだろうか。不動産経済研究所の発表によれば、2025年4月から9月の都内23区における新築マンションの平均価格は1億3309万円に達した。ファミリー層に人気の3LDKタイプでは、もはや中古マンションでも1億円を超えるのが当たり前という状況だ。このような価格“沸騰”の時代において、最新の住宅購入トレンドはどうなっているのか。不動産コンサルタントの岡本郁雄氏は「郊外エリアでは一戸建てを探す人が増えてきたという声も聞かれる」と語る。本レポートでは、都心マンションと郊外戸建て、それぞれの動向と購入層の変化を深掘りする。

都心マンションと郊外戸建て、住宅購入の選択肢を比較するイメージ都心マンションと郊外戸建て、住宅購入の選択肢を比較するイメージ

都心・駅近・大規模マンションの強さ:高騰市場での人気の理由

住宅価格が高騰を続ける中でも、都心に位置する大規模マンションは好調な売れ行きを見せている。その代表例の一つが、総戸数659戸を誇る渋谷区の地上28階建てタワーレジデンス「パークタワー渋谷笹塚」だ。このプロジェクトは、住宅、商業施設、事務所、子育て支援施設が一体となった複合開発であり、土地は70年間の期限付きで利用し、建物のみを所有する「定期借地権付マンション」という形式を採用している。

「パークタワー渋谷笹塚」に見る成功要因

「パークタワー渋谷笹塚」の第1期販売では、230戸すべてに登録申し込みが殺到。2025年9月30日時点での資料請求件数は約1万5000件、総来場者数は約1500組にも上り、その好調ぶりを物語っている。この成功を受けて、2025年10月には第2期として109戸の販売も開始された。購入層の中心は30代から40代の共働き世帯で、投資目的よりも実需層が大多数を占める。販売坪単価が約700万円、3LDKタイプでは1億5000万円を超える高額設定にもかかわらず、世帯年収2000万円超の層が積極的に購入しているのが特徴だ。

人気の背景には、都心かつ駅近という立地が提供する豊かなライフスタイルがある。京王線「笹塚」駅から徒歩4分の武蔵野台地の高台に位置し、駅前には3つの複合商業施設、8つのスーパー、4つの商店街が揃い、日常の買い物に困らない。さらに、渋谷駅と新宿駅からともに約3キロ圏内という交通利便性の高さも大きな魅力だ。総戸数659戸という大規模ならではのスケールメリットを活かした共用施設も充実しており、パーティールームやゲストルームが5つ設けられるなど、居住者に質の高い暮らしを提供している。

渋谷笹塚のタワーレジデンス「パークタワー渋谷笹塚」の外観イメージ渋谷笹塚のタワーレジデンス「パークタワー渋谷笹塚」の外観イメージ

共働き世帯の増加が住宅市場に与える影響

都心マンションの需要を牽引する重要な要因の一つに、共働き世帯の増加が挙げられる。2024年の「労働力調査(詳細集計)」によると、全国の「共働き世帯」は1300万世帯に達し、前年の1278万世帯から22万世帯増加した。これに対し、「専業主婦世帯」は前年の517万世帯から508万世帯へと減少傾向にある。過去10年間で見ると、共働き世帯は218万世帯増加する一方で、専業主婦世帯は215万世帯減少しており、このライフスタイルの変化が住宅市場の動向に大きく影響を与えていることがわかる。

マンションは、一戸建てと比較して駅近など通勤利便性の高い場所に供給されやすい傾向がある。このため、共働き世帯が増えることで、都心や都市近郊のマンション価格が上昇するのは自然な流れと言えるだろう。不動産経済研究所が発表した2025年度上半期の首都圏新築マンション平均価格は9489万円、東京23区に限定すると1億3309万円にも上り、共働き世帯のニーズが価格を押し上げている実情を浮き彫りにしている。

資産性で選ばれる都心マンション:戸建てとの比較

価格が上昇してもなおマンション購入が支持される最大の要因は、その資産性の高さにある。国土交通省が発表している2010年を100とした不動産価格指数を見ると、2025年6月時点での1都3県のマンション指数は213.2と、この15年間で2倍以上に高騰している。一方で、戸建て住宅の指数は125.1に留まっており、マンションの上昇幅が圧倒的に大きいことが明確だ。

このような資産価値の差は、新築マンションの供給戸数減少が大きく影響している。建築費の高騰やマンションに適した土地の不足により、都心部を中心に需要が供給を大幅に上回る状況が続いている。この需給バランスの崩れが、都心マンションの価格を押し上げ、同時にその資産価値を担保する要因となっているのだ。多くの購入希望者にとって、将来的な資産価値の維持・向上は、高額な住宅購入における重要な判断基準となっている。

結論

日本の住宅市場は、特に首都圏において、共働き世帯の増加と資産性への意識の高まりにより、都心・駅近・大規模マンションが引き続き強い人気を博すというトレンドが明確だ。高額な価格設定にもかかわらず、その利便性と将来的な資産価値が、高所得層の実需を捉えている。一方で、郊外での一戸建てへの関心も一部で見られるものの、現時点では都心マンションの圧倒的な資産価値の上昇が市場を牽引している。今後も、ライフスタイルの変化や経済状況が住宅市場の動向に大きな影響を与えることが予想され、購入を検討する際は、これらのトレンドを十分に理解し、自身のライフプランに合った選択をすることが重要となるだろう。

参考文献

  • 不動産経済研究所 発表データ (2025年4月-9月 都内23区新築マンション平均価格)
  • 総務省統計局 「労働力調査(詳細集計)」 (2024年 共働き世帯・専業主婦世帯データ)
  • 国土交通省 不動産価格指数 (2010年基準、2025年6月時点 1都3県マンション・戸建て指数)
  • 不動産コンサルタント 岡本郁雄氏 レポート (住宅価格高騰と市場トレンドに関する見解)