安全保障に絡む輸出管理をめぐり、日韓両政府が約3年半ぶりの政策対話を開いた。日本が夏に対韓輸出の手続きを厳格化してから初めてとなる対話再開について、梶山弘志経済産業相は「一つの進展だ」と語った。
日本の措置に対する韓国政府の不毛な反発が収まるのであれば、この対話は確かに重要な意義を持つ。ただ、両国の溝はいまだ埋まっておらず、本当の「進展」には、なお時間を要することになろう。
韓国が日本に求める措置撤回について、菅義偉官房長官は「相手国と協議して決定するような性質のものではない」と述べた。
当然である。日本が問題視する韓国側の体制不備について、韓国自身が具体的な改善策を示さないかぎり、日本は厳格化した手続きを元に戻しようがない。この点を韓国は厳しく認識すべきだ。
両政府は安倍晋三首相と文在寅大統領の首脳会談開催に向けて調整中である。だが、政治的な対話ムードに流されるわけにはいかない。日本は揺るがず輸出管理の原則を貫かなくてはならない。
反日色の強い文政権下で開かれることのなかった政策対話が局長級で再開した今、日本が見極めておくべき点がいくつかある。
まずは通常兵器に転用可能な輸出品を韓国側が法的にどう規制するかだ。ここが整っていないから日本の輸出品が韓国経由で世界に拡散する疑念が生じる。制度導入の意思はもちろん、その具体案や実現への道筋について、韓国は納得できる説明をすべきだ。
さらに脆弱(ぜいじゃく)とされる韓国の審査体制の拡充である。最近、韓国は担当職員の増員を発表した。単に増やすだけでは意味がなく、審査体制がいかに強化されたかを日本側で確認しなければならない。
何よりも韓国が信頼に足る姿勢をみせているかどうかが問われよう。韓国側代表は対話後、「韓国の輸出管理制度と運用が正常かつ効果的になされていることを説明し、理解を求めた」と語った。だが、現体制で問題なしというばかりでは、日本の懸念に真摯(しんし)に応えようとしているとは思えない。
近くソウルで次回対話が開かれる。もはや、かつてのように韓国の体制不備を大目にみることはできない。安易に妥協すれば、「徴用工」問題や慰安婦問題などと同様、再び大きな禍根を残すとみておかなくてはならない。