【国際】止まらない韓国の出生率低下 日本どころではない数値…「22世紀、最初に消滅する国」の危惧も[12/18]
「深刻な状態として強く認識している」──12月10日の閣議後記者会見で衛藤晟一少子化担当相は、2019年に生まれた赤ちゃんの数が87万人を下回る可能性があると報告した。1899年(明治32年)の統計開始から初の90万人割れで、厚労省の研究機関が2021年と見込んでいた想定より2年早い。
国内の少子化の波は一向に止まらない。1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は2005年に最低の1.26を記録後、緩やかに回復していたが、2015年の1.46をピークに減少傾向が続き、2018年は1.42となった。
だが、日本どころではない数値となっているのがお隣の韓国だ。2017年5月に文在寅政権が誕生してから合計特殊出生率の急激な低下が進み、ソウルは今年7~9月期に0.69、釜山は0.78を記録した。韓国全体でも同期0.88まで落ち込み、2019年は昨年の0.98を下回る0.8台となることが確実視される。
「この非常事態に韓国メディアからは『絶滅』との言葉が囁かれ始めました」と語るのは、元『週刊東洋経済』編集長で韓国経済に詳しい勝又壽良氏。
「そもそも2006年にはオックスフォード大学の人口学者デービッド・コールマン教授が『韓国は世界で初めて少子化で消滅する国になるだろう』と予測していましたが、最近は韓国メディアも“絶滅”を自覚するようになりました。中でも『朝鮮日報』はソウルの合計特殊出生率0.69を“絶滅への道に入った水準”と評し、人口学の専門家が、『もし“ソウル”と名付けられた人間の種がいるとしたら、絶滅の道に入ったと判断してもいいほどだ』と述べたほど。実際に韓国の合計特殊出生率は人口を維持するために必要とされる2.1の3分の1ほどで、このままでは本当に“22世紀に最初に消滅する国”になりかねません」(勝又氏)
なぜ韓国では極端な出生率の低下が進むのか。最大の原因として勝又氏が指摘するのは、景気停滞を背景にした「若者の生活苦」である。
「2018~2019年の最低賃金の引き上げ幅の合計が約29%にも上るなど文大統領の失政によって韓国経済が低迷し、韓国の若者の5人に1人が失業中と言われます。しかも不動産価格も高騰し、若者は結婚して住居を構えて子供を育てるゆとりがありません。実際に出産の先行指標となる婚姻件数は2017年が前年比6.1%減、昨年が同2.6%減で、今年1~9月期は前年同月比6.8%減となっています」(勝又氏)
このまま人口が減り続けると、2065年には韓国国民のほぼ2人に1人が65歳以上になるとの予測がある。将来の年金を払ってくれる世代の減少によって、すでに高齢者の公的年金を受け取っていない人の割合が54%という韓国の社会保障制度は崩壊の危機を迎える。
また日本以上のペースで進む少子高齢化によって韓国の生産年齢人口(15~64歳)が減少を続けることは、国内総生産(GDP)の成長を大きく引き下げる要因となる。
まさに国家存亡の危機と言えるが、文大統領に対策はあるのか。
「ワークライフバランスを重視する文大統領は、『生活が豊かになれば、おのずと出生率は上がる』との考えで、1.5だった出生率の目標設定を取りやめました。文大統領は少子化対策の中心となる『低出産高齢社会委員会』の委員長ですが、就任以来1度しか会議は開かれておらず、事実上の空中分解です。国家国民の存続よりも市民団体や労働組合の都合を優先する左派政権の文大統領のもとでは、出生率の回復は望めません」(勝又氏)
対立する日韓両政府は、少子高齢化という共通の悩みを抱えている。両国が協力して、国難打開のためのアイデアを出し合う機会は望めないだろうか。
●取材・文/池田道大(フリーライター)
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