【もう一筆】保守の矜持



 朝鮮中央通信が2016年4月に報じた、北朝鮮による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試験発射。日時、場所は不明(朝鮮中央通信=共同)

 「自分たちの国を支え守るために国民一人一人が何を負担するか-戦後70年余で私たち日本人が忘れ去ってしまったことを、もう一度考えさせられた」

 11月、秋田「正論」友の会講演会閉会の辞で、同会幹事で元秋田商工会議所副会頭の那波三郎右衛門さんはこう述べた。

 かつて加地伸行・大阪大名誉教授は「国民自身が運営する近代国民国家では、近世までの職業的軍団・出身身分的軍人と異なり、国防も国民全員の義務となる」と指摘している。

 だが那波さん指摘のとおり、今の日本には「平和を叫んでいれば誰かが守ってくれる」「国は国民を守るべきだが、国民への負担押し付けはまっぴらだ」という国民が少なくない。

 秋田へのイージス・アショア配備をめぐる議論もそうだ。決して危険な防衛施設ではないのに、地元メディアを中心に情緒的反対論が渦巻く。

 イージスは北朝鮮や中露の核ミサイルなどを常時監視し、万一発射しても迎撃ミサイルがあるから「無駄だよ」と抑止するのが最大の狙い。だから世界で迎撃ミサイルの稼働例はない。 こうした抑止力を強固にするのは完璧なレーダー態勢と運輸補給など万全な後方支援を確保できる立地で、秋田の新屋演習場が最適なことに変わりない。

 この道理を知事も保守系議員も説こうとしない。自分の選挙に響く不安もあるのだろうが、国家の正しい針路のためには政治生命も懸けるのが「保守の矜持(きょうじ)」ではないか。(八並朋昌)



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