7月の参院選後に開かれた国会はバリアフリーが大きなテーマとなった。障害があり、車いすを利用する3人の参院議員が初当選し、議席の改修などの整備が求められたためだ。参院は総額9億円程度の施設整備案をまとめ、「良識の府」のバリアフリー化は着々と進んでいる。
■介助者入場
当選したのは、れいわ新選組の木村英子、舩後靖彦両氏と国民民主党の横沢高徳氏。過去には脊椎を損傷した八代英太元郵政相が車いすで活動したが、重い障害をがある木村、舩後両氏は大きな車いすを利用する。
参院事務局は3人分の議席を改修して木村、舩後両氏のスペースを確保し、医療器具用の電源も取り付けた。参院職員以外は入れない本会議場への介助者入場も認めた。両氏がサービスを受けていた障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」は通勤や就労が対象外のため、当面参院が費用を負担する。
横沢氏は今月4日の本会議で、車いすでは八代氏以来19年ぶりに演壇に上がった。首相主催の「桜を見る会」の招待者に関し「マルチ商法や反社会(的勢力)のどこに功績があったのか」と政府を追及。ツイッターに「車イスを利用しての国会活動に対し合理的配慮を頂いたことにあらためて感謝!!」とつづった。
木村、舩後両氏も委員会で質問した。言葉を発せられない舩後氏は11月7日の文教科学委で、パソコンの意思伝達装置による音声で「精いっぱい取り組む」と述べた後、秘書が代読して質疑した。手を動かせないため、目で文字盤を追い再質問用の代読文書を作成する間は、議事進行を止めるなどの配慮も重ねられた。
舩後氏は産経新聞に書面で「時間配分や内容などうまくいったときは手ごたえを感じた。周囲の先生に『良かった』と言われたときは心の中でガッツポーズを作った」と振り返った。
議運委理事会メンバーによる「バリアフリー化推進プロジェクトチーム(PT)」は本会議場演壇へのスロープ設置など14項目の施設整備案をまとめた。共産党議員も加わり、座長を務めた自民党の大家敏志氏は「全党一致でやれた。これができてこそバリアフリーだ」と胸を張った。
■トイレ間に合わず
一方、厳しい現実もある。参院は3階トイレを大型の車いす利用者でも使用できる多目的トイレに改修しようとしたが、国会開会中は土日しか工事ができない条件の下、業者が見つからなかった。参院事務局は「国会という古い建物の条件もあるが、できるだけ早くやりたい」と説明する。PTは「世界一開かれた参院を目指す」と宣言しているが、実効性のある取り組みが求められている。(今仲信博)