大阪・泉佐野市、職員給与削減終了へ ふるさと納税で財政改善受け




 大阪府泉佐野市が厳しい財政状況を受けて平成23年から続けている一般職の給与削減を、来年4月に終了する方針を固めたことが19日、関係者への取材で分かった。役職に応じて決められている9~4%の削減幅を元に戻す。業務効率化などが進んだ上、ふるさと納税の寄付金が30年度に約498億円に上ったことが大きく寄与し、財政が改善したためという。

 同市は20年度決算で財政破綻一歩手前の財政健全化団体に転落。その後、遊休資産の売却、他自治体との広域連携による業務効率化などを進め、25年度決算で財政健全化団体から脱却した。一般職の給与削減は23年7月から始まり、当初は13~8%、27年4月からは9~4%に削減幅を縮小し継続している。現在、職員給与から手当などを除いた平均月額は33万2226円(30年4月、47歳の一般行政職)。削減解消により平均で約2万8千円の増額になる見込み。

 地方自治体の財政は、人件費や社会保障費などの「義務的経費」や、学校の施設建設や芸術・文化振興などの「投資的経費」などに分類される。同市へのふるさと納税は義務的経費には使われず、各種基金に積み立てられた上で、投資的経費に回されている。

 ただ、24年から始めたふるさと納税の返礼品拡充で寄付額が拡大したことにより、市全体の歳入総額が増加。30年度決算では、将来負担する負債が財政規模に占める割合を示す将来負担比率は前年度の149・1%から35・7%まで改善した。これを受け、同市は将来的な財政不安が軽減されたと判断。給与削減の終了に踏み切るという。

 同市は今回の措置について「ふるさと納税も寄与して財政指標が改善に向かっており、職員からも給与の回復を求める声が強い」と説明している。

 ■「ふるさと納税、給与回復に充てず」求められる納税者への説明

 泉佐野市がふるさと納税で30年度に集めた約498億円の寄付金は、同年度決算(普通会計)の歳入総額約1330億円の4割近くを占めた。市税収入が約212億円だったことを踏まえれば、市の財政にもたらした影響は大きい。ただ、今回の職員給与の回復方針は「ふるさと納税を給与に回した」と受け止められかねず、納税者らに対して市の丁寧な説明が求められる。

 同市へのふるさと納税は公共事業や教育などの基金に積み立てられ、寄付者の希望により学校のプール建設や芸術・文化振興、市民団体のイベント支援など、「これまで手を付けられなかった投資的経費」(ふるさと納税担当者)として使われる。市は、当初の予想以上に基金が積み上がった結果、財政全体の自由度を増したことが給与回復につながったとし、「ふるさと納税を人件費には充てていない」と強調する。

 一方、来年度以降の財政運営には不透明感が漂うのも確かだ。ふるさと納税をめぐり、総務省は「不適切な方法で多額の寄付金を集めた」として新制度から同市を除外。市は11月、大阪高裁に総務相を提訴したが、制度復帰の見通しは立っていない。

 また、総務省は同市について「財政に余裕がある」として、今年3月分と12月分の特別交付税を減額。市は不服として同省に審査を申し立てる方針で、財政担当者は「ふるさと納税を一般の収入と同列にとらえているのは納得できない」と抵抗している。

 財政がこのまま健全化に向かうのか、厳しい状況が続くのか。市は納税者に対し、ふるさと納税を財政にどう位置づけていくか十分な説明をし、理解を得なければ財政健全化への一歩は踏み出せないだろう。(牛島要平)



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