コンサートでの熱唱は迷惑行為?B’zライブで起きた「歌声かき消し」騒動とその波紋

コロナ禍における「声出し禁止」の制限が解除され、アーティストのコンサートを心ゆくまで楽しめるようになった一方で、一部の観客による過度な熱唱が周囲の迷惑となるケースが浮上しています。特に、人気ロックユニットB’zの東京ドーム公演で起きたある出来事が、X(旧Twitter)上で大きな話題を呼んでいます。

B’zライブで体験した「歌声かき消し」の衝撃

あるB’zファンは、12月上旬に開催された東京ドーム公演に当選し、新アルバムツアーの新曲や大規模な演出を心待ちにしていました。ステージのほぼ真横という絶好の一階スタンド席だったにもかかわらず、ライブ開始直後から後方席の男性の歌声が大きく響き渡り、稲葉浩志氏の歌声に集中できない状況に陥ったといいます。ファンが抱いたのは、「歓声ならまだしも、アーティスト以外の歌声を聴きに来たわけではない」という当然の疑問でした。

この状況に、一緒に参加していた母親も途中から耳を覆う仕草を見せるほどでした。困惑したファンは男性に声を抑えるよう懇願しましたが、男性は「ライブは楽しむものじゃないの?」と笑って反論。さらに、隣の観客に「迷惑ですか?」と尋ねる行為も見られましたが、その場で「迷惑です」とは言いにくい状況であったことは想像に難くありません。結局、男性は同伴者と席を交換しましたが、このファンは「私の代わりに他の人があの声を聴かされていると思うと申し訳なかった」と複雑な心境を語っています。B’zの演奏と稲葉氏の歌声を楽しみに来たにもかかわらず、少なくとも6曲が男性の歌声にかき消されてしまったことは、大きな無念と悔しさを残しました。

東京ドームでのライブの様子東京ドームでのライブの様子

音楽ライターが語る「歌う観客」問題と国内外の違い

このような「歌声かき消し」の経験は、決して珍しいことではありません。長年ライブに通う音楽ライターも、海外アーティストのライブで隣の女性客が最初から最後まで熱唱していた経験を語っています。ライターは、日本のアーティストと海外アーティストのライブでは、観客が一緒に歌うことに対する認識に大きな違いがある点を指摘します。海外アーティストのライブでは、マイクを向けられなくても有名な曲であれば観客が一緒に歌うことが「当たり前」とされている風潮があります。

しかし、1万5000円という安くないチケット代を払ってライブに足を運んでいるにもかかわらず、アーティストではなく見知らぬ観客の大熱唱を聴かされるのは、「やはりつらい」というのが本音でしょう。ライターは「仲間と一緒に歌いたいなら、カラオケに行ってほしい」と述べ、ライブ会場ではアーティストのパフォーマンスを尊重し、周囲の観客への配慮が重要であることを強調しています。

コンサートマナーの再認識と共存の道

今回のB’zライブでの騒動は、コンサート会場におけるマナーと、個人の楽しみ方と周囲への配慮のバランスについて改めて考えさせるきっかけとなりました。ライブは、アーティストと観客が一体となって作り上げる特別な空間です。しかし、その一体感が他者の体験を損なうものであってはなりません。大声で歌うことは個人の自由かもしれませんが、アーティストの歌声を聴きに来た多くの観客にとって、それは迷惑行為となり得ます。観客一人ひとりが互いにリスペクトし、音楽を楽しむという共通の目的のもと、より良いライブ体験を共有するための意識を持つことが求められています。