杏がまとう、年末年始を彩る優美な訪問着スタイル

年末年始は、パーティや賀詞交歓会、ニューイヤーコンサートなど華やかな催しが目白押しです。このような特別な席では、日本の伝統美を象徴する着物が、大人としての品格と晴れやかさを一層引き立てます。モデル・俳優として多忙な日々を送る杏さんが、優美な訪問着を見事に着こなし、その魅力を余すことなく披露しました。彼女の洗練された着物スタイルは、日本の伝統と現代のライフスタイルが融合した、新たな美の形を提案しています。

[杏さんのライフスタイルを紹介するYouTube動画も人気を集めています。]
杏が常磐の松模様の訪問着をまとう杏が常磐の松模様の訪問着をまとう

松模様の織り絵羽に弥栄(いやさか)の願いを込めて

現在、3人のお子さんたちと共に日本とフランス・パリを行き来する二拠点生活を送っている杏さん。彼女の豊かなライフスタイルはYouTube動画でも大変な人気を集めています。今回披露された一着は、常磐の松を緑色の濃淡で精緻に織り表した繻珍錦(しゅちんにしき)の織り絵羽訪問着です。繻珍とは、繻子組織の地に多色の緯糸(絵緯)で模様を表す凝った技法で、その艶やかな光沢と立体感のある表現が特徴です。この技巧を凝らした着物に、本金糸を用いた格式高い袋帯を合わせることで、新年の寿ぎにふさわしい華麗な装いが完成しました。まさに、永遠の繁栄を願う年末年始の集いに最適な装いと言えるでしょう。

[この訪問着には、錦の小袖・創琳の着物と帯、渡敬の帯〆と帯あげが使用されています。リングはショパール、バッグはヴァレクストラが提供しています。]
常磐の松を表現した緑色の繻珍錦訪問着常磐の松を表現した緑色の繻珍錦訪問着

装飾模様や唐花が異国情趣を醸し出す訪問着

次に杏さんが着こなしたのは、多彩な更紗模様と、裾を彩る異国風の装飾がモダンな印象を与える訪問着です。透明感のある水色の地色が、繊細でありながら大胆なデザインを引き立てています。この独特なデザインの着物に、黒地に金糸で織り出された蜀江(しょっこう)模様の袋帯を合わせることで、全体が引き締まり、華やかなパーティの席にふさわしい重厚感を添えています。杏さん自身も寒色系がお好みとのことで、特にこの水色の更紗の着物には強い関心を示していました。「大胆なデザインが見事ですね。実際に袖を通して間近で見ると、大変な手間をかけて作られた手仕事の繊細さがよくわかり、身が引き締まります」と、その卓越した職人技に感嘆の声を上げていました。

[この着物には、染の百趣矢野の着物、岡文織物の帯、渡敬の帯〆と帯あげが使用されています。ピアスとリングはショパール、草履は伊と忠が提供しています。]
水色の更紗模様と異国風装飾の訪問着水色の更紗模様と異国風装飾の訪問着

杏さんがまとう二種類の訪問着は、それぞれ異なる魅力と洗練された日本の美意識を表現しており、特別な日を彩る和装の可能性を広げます。伝統的な技法と現代的な感性が融合したこれらの着物スタイルは、見る者に深い感銘を与え、年末年始の装い選びのインスピレーションとなることでしょう。彼女の着こなしからは、着物に対する深い理解と愛情が伝わり、日本の美しい文化を次世代に繋ぐ大切な役割を果たしています。

モデル・俳優:杏
撮影:生田昌士(hannah)
ヘア&メイク:平元敬一
着付け:奥泉智恵
撮影協力:グランドプリンスホテル高輪 貴賓館
編集:望月聖子(美しいキモノ編集部)
出典:『美しいキモノ』2025年冬号より