北朝鮮労働者、安保理報告では送還2万数千人だけ 中露は制裁緩和を主張





17日早朝、中国遼寧省丹東の工業団地で、隊列を組んで宿舎から工場へ出勤する北朝鮮の労働者ら(西見由章撮影)

 【ニューヨーク=上塚真由、モスクワ=小野田雄一】国連安全保障理事会が22日までの送還を求めている北朝鮮の海外出稼ぎ労働者について、米政府は2017年末時点で、中国やロシアを中心に約10万人が派遣されていると推計していた。国連加盟国の報告によれば、これまでに送還されたのは2万数千人にとどまる。加盟国の最終報告期限は来年3月末で、対北朝鮮制裁の緩和を主張する中露の対応が注目されている。

 北朝鮮労働者の送還を求める安保理制裁決議は17年12月に採択された。国連加盟国が2年以内に労働者を送還することや、送還状況に関する中間報告と最終報告の提出を定めた。

 安保理の北朝鮮制裁委員会によると、今月16日までに計48カ国が報告書を提出。ロシアは自国内の北朝鮮労働者が17年末からの1年間で「3万23人から1万1490人に減った」と報告した。中国は3月に報告書を提出したが、内容は非公表。安保理関係筋によると、「半数超」を送還したとの説明があったという。

 17年末時点の米政府推計によると、北朝鮮労働者は中国に約5万人、ロシアに約3万人派遣され、年間5億ドル(約547億円)超を稼いでいた。中露は決議に従い送還手続きを行っていると主張してきたが、今月16日には、送還義務の撤回を盛り込んだ制裁緩和の決議案を安保理で配布した。

 北朝鮮問題を専門とする米ミズーリ大のシーナ・グレイテンズ准教授は「中国とロシアでは、北朝鮮国民に対する観光用や学生用の査証(ビザ)の発給が大幅に増えている。こうしたビザを使って外貨を稼ぎ、制裁逃れをしている可能性がある」と指摘している。

 露外務省幹部は「(今月22日の)期限内に送還を完了する」と説明。しかし、ロシアのインタファクス通信は20日、「一部の労働者は学生ビザに切り替えて働き続けている」とする極東の建設業界関係者の話を伝えている。



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