今年9~10月に発生した台風15号、19号に関連する損害保険各社の保険金の支払いが滞っている。相次ぐ被害で修理業者が不足しており、被災物件の修理見積もりが終わらず、保険金請求ができない事例が多いためだ。この2つの台風による損保各社の保険金支払総額は現時点で約7500億円に上る見通しだが、詳細な見積額が判明すれば1兆円を超えるのではないかとの指摘もある。そうなれば火災保険料の値上げは濃厚で、家計への負担も増しそうだ。
「公表した数字から今後も増加すると見込まれる」。12月19日、都内で行われた日本損害保険協会の定例会見で、金杉恭三会長(あいおいニッセイ同和損保社長)はこう断言した。
この日、同協会が発表した台風15号、19号に関連する保険金の支払件数は約65万件、金額は約7467億円(同月9日時点集計)。金杉会長は明言を避けたが、詳細な支払額が判明すれば、「自然災害による今年度の保険金支払総額は1兆円を超える可能性もある」(大手損保)。
台風19号の発生から約2カ月が経過しているが、「被害件数の半分程度しか保険金は支払われていない地域もある」(同)のが現状で、保険金の支払いが円滑に進んでいない地域も複数あるようだ。
原因の一つは、保険金の支払金額を見積もる修理業者の不足だ。
9月に上陸した台風15号は千葉県を中心に被害が拡大。停電が2週間近く続き、発生から1カ月近く経過しても復旧していない地域が散見された。全国から修理業者が千葉県内に集結したが、「被害実態の調査開始が遅れ、被害診断にも時間がかかった」(業業関係者)。
さらに、千葉県内で修理業者が見積もりを進めている最中、間髪入れず10月に台風19号が上陸。千葉に集まっていた修理業者は「より被害の深刻な関東、東北、東海地域へと散らばったため、修理業者の不足感がさらに増した」(同)。
そもそも、火災保険の申請は時間がかかる面倒な作業だ。まずは火災保険が適用されるかどうかを診断するため、優良な修理業者か診断士を見つけて、被害の見積もり作業を始めないといけない。“優良な”と強調したのは、なるべく多くの保険金を支給させて、工事代金を上げるよう仕向けたり、保険会社に虚偽報告をするような“悪徳業者”が、少なからずこの業界には存在するためだ。