【中東見聞録】イスラエルが右傾化に見える本当の理由





12月15日、エルサレムで定例閣議に参加するイスラエルのネタニヤフ首相。11月には現職首相として初めて訴追を受けた(AP)

 イスラエルで2020年3月に、わずか1年足らずで3度目となる総選挙が行われることになった。右派政党リクードを率いるネタニヤフ首相と、中道右派の政党連合「青と白」を束ねるガンツ元軍参謀総長が、2度の総選挙を経ても連立交渉をまとめられず、それぞれ組閣に失敗したためだ。右派主導の権力闘争と政治空転が続くなか、左派系勢力は完全に埋没。パレスチナとの和平問題などほとんど議論にもならない状況は、今後も続きそうだ。(前中東支局長 大内清)

■空転する政治

 イスラエル国会(クネセト、定数120)は、全国1区の完全比例代表制である。同じ議院内閣制でも、単純小選挙区制をとる英下院や、小選挙区と比例代表を併用する日本と違って、ひとつの党が過半数を制することはまず不可能なシステムとなっている。少数政党が乱立しやすいからだ。

 このことを踏まえた上で、簡単に状況を整理しておこう。

 今年4月と9月に行われた2度の総選挙では、長らく連立政権の一角を占めてきた極右「わが家イスラエル」のリーベルマン党首が、ネタニヤフ氏の退陣を主張して連立を拒否。「キングメーカー」の座を狙うリーベルマン氏は、ユダヤ教超正統派への優遇措置撤廃を主要争点に据え、超正統派政党と組むリクードに揺さぶりをかけた。

 ネタニヤフ氏は、自身の汚職疑惑もあいまって求心力が低下し、組閣を断念。11月には現職首相として初めて訴追まで受け、政治混乱に拍車がかかった。

 かたや、ガンツ氏の「青と白」は、ネタニヤフ氏を排除した上でのリクードとの大連立に意欲をみせたものの、切り崩しは成功せず、他党との連携に欠いたこともあってやはり組閣には至らなかった。

 ちなみに、いずれの選挙でも、リクードと「青と白」の議席はほぼ同数だった。そして、前述のとおり、選挙制度が完全比例代表である以上、次回選挙でも大きく差が開くとは考えにくく、また同じようなやり取りが繰り返されることにもなりかねない。

 これが、イスラエル政治の現状だ。まさに空転である。

■「右傾化」なのか

 ところで、イスラエルをめぐっては近年、「右傾化が進んでいる」との分析がしばしばなされてきた。

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