自衛隊中東派遣 政府、米イラン双方への配慮にじむ





海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」(本社ヘリから)
その他の写真を見る(1/2枚)

 日本政府は27日に閣議決定した中東海域への海上自衛隊派遣に向けた準備を時間をかけて慎重に進めた。安倍晋三首相は同日のBSテレ東番組収録で、対立する米国とイラン双方と日本が友好関係にあることに関し「仲介は簡単にはできないが、日本にしかできないことをやっていきたい」と強調した。

 派遣は日本独自の取り組みだが、形式や内容には米イラン双方への配慮がにじむ。米国は5月以降、ホルムズ海峡付近でタンカー攻撃などが相次いだことを受け、地域で船舶警護を図る有志連合への参加を日本などに打診した。だが、「イラン包囲網」の色彩を帯びた有志連合に加われば、「日本は米国に加担した」とみなしたイランとの関係に亀裂が生じかねない。

 一方、有志連合への参加は日米安全保障条約の義務ではないが、米国の要請を拒否し、日本だけ高みの見物を決め込めば対日不信を招き、日米同盟に波風が立ちかねない。そこで自衛隊を独自に派遣することで、地域の安定化に主体的に取り組む姿勢を米国など関係国に示しつつ、活動範囲からホルムズ海峡を除外してイランにも配慮した。

 関係国の理解を得るための根回しも進めた。首相は20日、来日したイランのロウハニ大統領と会談し、海自派遣計画を説明。ロウハニ師は「日本が透明性をもってイランに説明していることを評価する」と理解を示した。政府は当初、20日の閣議決定も検討したが、同日来日したロウハニ師にも配慮し、27日とした。

 首相は21日にはトランプ米大統領と電話で会談。ロウハニ師との会談結果を伝え、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向け緊密に連携していくことで一致した。首相は27日、年明けに中東を訪れる意向を表明した。日本政府の不断の外交努力は今後も求められる。(原川貴郎)



Source link