タピオカ入りドリンクを飲むことを指す「タピる」が流行語になるなど、令和元年を席巻したタピオカの輸入量が直近、減少傾向にある。タピオカがブームになるのは今回が3度目で、これまではいずれも不況に前後して訪れたが、定着しなかった。折しも現在、景気の停滞懸念は強まっている。タピオカは不況を知らせる「炭鉱のカナリア」なのか。タピオカと日本経済が正念場を迎えている。
タピオカは熱帯性の低木、キャッサバの根茎から製造されたでんぷん。球状に加工され、ミルクティーなどに入れて太いストローで飲まれることが多い。インスタグラムなどのSNSに写真をアップして楽しむ人も多く、若い女性を中心に流行している。
財務省が発表した11月の「タピオカ」と「タピオカ代用物」の輸入量は2028トンで前月比0・75%減だった。夏のイメージが強いだけに秋冬に輸入量が減るのもうなずけるが、ピークを過ぎてしまった感も否めない。
東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長によると、タピオカ関連事業者は全国に約60社。一部事業者は「冬場は売り上げが落ちるが、夏過ぎから来店客数が落ちていた」とブームの終焉(しゅうえん)の兆しを感じているという。原田氏は「間違いなく沈静化している」と語る。
タピオカがブームとなったのは今回が初めてではない。東京商工リサーチによると、第1次ブームは、バブル崩壊直後の平成4年ごろ。第2次ブームはリーマン・ショックの20年ごろだった。「因果関係は不明」(原田氏)ながら、いずれも不況に前後している。
景気の先行きは見通し難い。直近の日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)では大企業製造業の景況感は4四半期連続で悪化。米中貿易摩擦により輸出は低迷し、10月の消費税増税の個人消費への影響度合いも不透明だ。
「タピオカと景気が連動するという話はあながち偶然でもない」。大手生保の運用関係者は語る。500円程度で売られることが多いタピオカドリンクの原価は数十円程度。こうしたものに喜んでお金を出せるのは、「バブル期の消費行動を思わせる」というのだ。
タピオカ入りのミルクティーは“バブルティー”との別名もある。果たしてタピオカは、一過性のブームではなく今度こそ日本に定着できるのか。ジンクスを打ち破るには、日本経済にもモチモチとしたタピオカのような粘り腰が求められそうだ。(林修太郎)