朝鮮中央通信が22日に報じたところによると、北朝鮮は3隻目となる駆逐艦の建造に着手しました。北朝鮮は今年すでに2隻の駆逐艦を進水させており、この急ピッチな建造ペースは、軍事協力を強化しているロシアからの支援がある可能性を示唆しています。これは、地域における軍事バランスに影響を与えかねない動きとして注目されます。
新型駆逐艦建造計画の詳細と背景
同通信は、北朝鮮西部に位置する南浦(ナムポ)造船所で21日に決起集会が開催され、そこで新たな5000トン級駆逐艦を来年10月10日の朝鮮労働党創建記念日までに建造する計画が発表されたと伝えました。この目標設定は、北朝鮮が海軍力増強を国家的な優先事項としていることを明確に示しています。
これまで北朝鮮は今年4月に「崔賢(チェヒョン)」、続いて6月には「崔賢」級の2番艦である「姜健(カンゴン)」を相次いで進水させています。今回建造が始まったのは、この「崔賢」級の3番艦に当たるとされています。これらの動きは、北朝鮮が短期間で複数の大型艦艇を建造する能力を有していることを示唆しており、国際社会の懸念材料となっています。
「崔賢」級駆逐艦の性能と核戦略への影響
「崔賢」級駆逐艦は排水量5000トン級とされ、戦術弾道ミサイルや戦略巡航ミサイルなどを装備していると見られています。今回建造中の3番艦も、同様の高度な兵器システムを備える可能性が高いと専門家は指摘します。このような高性能な駆逐艦の配備は、北朝鮮の核攻撃能力の多様化、特に海上からの核報復能力の確立を目指す狙いがあると考えられています。これは、米韓同盟に対する抑止力を高めるとともに、将来的な交渉における北朝鮮の立場を強化するための戦略的な動きと分析されます。
金正恩総書記の海軍増強ビジョンとロシアの関与
2024年6月の「姜健」進水式に出席した金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は、「来年から、『崔賢級』またはそれ以上の駆逐艦を毎年2隻ずつ建造して作戦海域に配置する」と述べ、海軍力の飛躍的な増強を目指す強い意志を表明しました。この発言は、北朝鮮の軍事戦略が従来の陸上中心から、海上戦力の強化へと重点を移している可能性を示唆しています。
北朝鮮の金正恩総書記、新型駆逐艦の建造を推進し、海軍力増強への意志を示す
北朝鮮と緊密な関係を築いているロシアが、これらの駆逐艦建造を支援している可能性も指摘されています。韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮の駆逐艦が完全に戦力化されるには相当な時間を要するとしながらも、搭載されている兵器の性能などを鑑みると、建造プロセスにおいてロシアの技術支援や資金援助があった可能性を排除できないとの見方を示しています。もしロシアの支援が事実であれば、これは国連安保理決議に違反する可能性があり、国際社会からの批判が高まることが予想されます。
今後の展望
北朝鮮による3隻目の駆逐艦建造開始は、同国の海軍力増強への強い意欲と、核・ミサイル能力の多様化戦略の一環として捉えられます。特に、ロシアからの支援の可能性は、今後の国際情勢における北朝鮮とロシアの関係性、そして東アジアの安全保障環境に与える影響という点で、引き続き注視されるべき重要な動きです。日本を含む周辺国は、この新たな軍事動向に対して警戒を強め、適切な対応を検討する必要があります。