保釈中に不法に逃亡した日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告がレバノンで会見し、日本の司法制度や日産を一方的に批判した。
本紙を含む多くの日本のメディアは会見から排除された。内容に新味はなく、逃走経緯にも口をつぐんだが、ゴーン被告は「制度が変わらない限りは外国人には誰も日本へ行くことを勧めない」とまで述べた。
これを放置しては、日本の国益に関わる。政府を挙げて徹底的に反論すべきである。
東京地検は会見終了後の9日未明、「我が国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない」などとするコメントを出し、ホームページに英文でも掲載した。
森雅子法相も同日未明、午前の2度にわたって会見し、「旅券を提示せず不法に逃亡したのは子供たちにも説明できない信義にもとる行為だ」などと述べた。法相のコメントも英語、フランス語でホームページに掲載された。
極めて異例の対応である。検察は従来、公判廷以外で口を開くことを嫌ってきた。迅速な対応はゴーン被告の身勝手な主張が独り歩きすることを防ぐためで、森法相は「ただちに世界の皆さまに(日本側の主張を)理解してもらうためだ」と強調した。
例えばゴーン被告が99%を超える高い有罪率を批判したことに対し、森法相は「我が国の検察においては無実の人が訴訟負担の不利益を被ることなどを避けるため、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に初めて起訴する」と反論した。
こうした姿勢を評価する。ただし、ゴーン被告側が仕掛ける情報戦は日本の主権を否定し、「法の支配」に基づく日本社会そのものへの攻撃である。政府は対応を法務・検察に任せず、一丸となってこれに当たる必要がある。
菅義偉官房長官は「ゴーン被告の主張は一方的なもので全く説得力に欠ける」と批判したが、身柄引き渡しの可能性については「レバノン政府の判断に関する事柄で日本政府としてコメントする立場にはない」とも述べた。
物足りない。安倍晋三首相は、ゴーン被告の逃亡について全く言及していない。ゴーン被告の身柄を取り戻し、適正な刑事手続きを行うためには、首相をトップとする外交攻勢が必要である。