ビジネス現場で大量の情報(ビッグデータ)を分析・活用する職業「データサイエンティスト」の人材が不足する中、大学生の就活現場で異変が起きている。「官僚でもなく、有名企業でもなく、データサイエンティスト職を志望する東大生が目立ち始めている」(就職情報会社)からだ。すでに転職業界では、高給での人材争奪戦が沸騰しており、あおりを受けた企業が高学歴の東大生を“青田買い”しようという図式だ。学生側も、日本企業の終身雇用制度の維持が難しくなる中、高給で自由に働くことができる魅力を感じている。
高度な専門職
データサイエンティストには、ビッグデータを分析して消費者の行動や好みに合うサービスの提供や、詳細な市場分析、将来予測などが求められる。世界では約30万人のデータサイエンティストが不足しているとの調査があり、日本も例外ではない。
慶応大大学院の渡辺美智子教授(統計科学、データサイエンス論)によると、データサイエンティストには公的な資格はまだないが、統計学、人工知能(AI)、機械学習、IT、プログラミングと多方面の知識が必須という。そのうえ、「ビジネスセンスも必要。データを分析し、ビジネスモデル創出の支援を手がける高度な専門職」(渡辺教授)という。
人材不足に悩む企業は、高学歴の東大生に注目する。官僚やメガバンク、商社など大手の有名企業に強い東大生の就活だが、ここ数年は様変わりしている。
東大と京大の令和3年度卒業・修了予定者(大学院含む)2693人に聞いた就職先ランキングでは、1位のアクセンチュアから7位のベイン・アンド・カンパニーまで、コンサルティグ会社が独占した(就活サイト、ワンキャリア調べ)。ある人材紹介会社の関係者は「職種別でのランキングの集計は少なく、データサイエンティストの人気度は不明だ。しかし、アクセンチュアのようにデータサイエンティストを前面に出して募集しているコンサルがある」と指摘。特に東大生はコンサル志望が多く、データサイエンティストの希望者が人気を支えているという。