安倍晋三首相のサウジアラビア訪問は、従来の資源確保や親善目的に加え、中東地域の緊張緩和に向けた役割を担う日本の姿勢を印象づけた。米イランが対立する中、中東の大国サウジの首脳に抑制的対応を促し、緊密な連携を取り付けた意義は大きい。一方で、米国に近いサウジなどに傾斜しているように映れば、米国と敵対するイランの不信感を招くリスクも抱える。首相の「仲介外交」はガラス細工の様相だ。
ムハンマド皇太子「東京や(サウジの)リヤドで高いビルばかり見ているよりも、この大自然のなかで、人間は英気を養うことができる」
首相「生涯の記憶に残る」
首相とムハンマド氏による12日夜(日本時間13日未明)の会談は、サウジ北西部ウラー近郊の、ビルほどの高さの切り立った岩肌が露出した広大な砂漠に囲まれたムハンマド氏の別荘の敷地内で行われた。首相もサウジ側が用意した民俗衣装に身を包み、サウジの文化に寄り添った。
会談に同席した岡田直樹官房副長官によれば、両氏は「腹を割って話すことができた」という。サウジ側の首相に対する厚遇は、中東の大国であるサウジとイラン双方とパイプを持つ首相の強みを際立たせた。
一方で、中東各国と友好関係を持つからこそ、日本は今後、難しいかじ取りを強いられる可能性もある。